第六十八段 新年祈願
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十八年の正月
今年一年を寿ぎ 歌を
つくづくと 「塞翁が馬」を 知るからに
平穏なれと この年を祈む
と詠み、「塞翁が馬」の故事である
昔、塞翁なる人物が飼ってゐた馬に
逃げられ悲しみけり。
しかれど、後日その馬が
駿馬を伴ひ戻り来て大いに喜びけり。
その後、その駿馬に息子が乗り落馬し
怪我を負ひ悲しみけり。
更にその後、戦争が起こり息子は怪我のため
兵役免除され喜びけり。
つまり、禍福は糾へる縄の如し
がこの故事の意味にして
望外の喜びも、想定外の悲しみも望まざりけり