新編・伊勢物語 第六十六段 東山道の御坂峠 星原二郎第六十六段 東山道の御坂峠 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十七年の初冬の頃、信濃の国と 美濃の国境なる御坂峠へと行きけり。 ここは万葉集に防人である神人(かむと)部(べの)子忍男(こおしを)が東歌を 遺せしところなり。 遠きいにしへを思ひ、歌を いにしへの 東山道の 難所なる 御坂越えゆく 東人(あづまびと)偲ばゆ と詠み、同じ道を辿らむとせしが その男 冬の装備を持たざれば かかる難所は無理と諦めけり。