新編・伊勢物語 第四十八段 安城の銘酒 星原二郎 第四十八段 安城の銘酒 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十七年の師走のある日 祖父のふるさと、安城の銘酒『三河万歳』を 手に入れけり。 一升瓶の口を開けその美味さに舌鼓を打ち 歌を わが祖父の 安城の地の 酒にして 『三河万歳』 飲みて酔はまし と詠み、祖父の思ひ出を肴として 生前には一度(ひとたび)も酌み交はししことなけれども 共にの思ひもて飲みけり。