第四十四段 還りゆくところ
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、三河の国は豊川市の生まれなり。
出生地を離れ、年月は過ぎたれど中国の諺の
「狐死首丘」(狐死して、丘に首す)
その意は【狐は死ぬ時にも、なほ自分の棲んでゐた
穴のありし丘の方に首を向ける】といふ故郷を思ふ
狐の心情にいたく共感を覚え歌を
いつの日か わがたましひは 還りこむ
ふるさと野辺の この奥津城に
と詠み、フォークソンググループ「海援隊」の
名曲『思へば遠くへ来たもんだ』を唄はむがために
友を誘ひ、カラオケの店へと行きけり。