第四十三段 賓頭盧尊者
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十七年の秋 酣の頃
長女家族の住む美濃の国は瑞穂市へと行きけり。行きて
市内にある、円鏡寺に参り賓頭盧尊者坐像を拝みけり。
賓頭盧尊者は仏弟子にして、十六羅漢のひとり。
神通力を弄びたる咎により、釈迦牟尼より悟りの世界である彼岸に渡ることを許されず、此岸に留まり衆生の救済に務めたる者なり。
俗に なで仏 とぞいひて参拝者の悪しきところ
賓頭盧尊者のその個所を撫でると治癒に霊験あらたか
とぞ伝はりけり。
拝顔し歌を
撫でられて 賓頭盧尊者の おん坐像
いたく傷めど なほつくします
と詠み、その男 自称 釈迦牟尼と時空を越えての
友と思ひをり、また 仏弟子のひとりと思ひをれば、
敬意を表し、深く頭を下げ労を犒ひけり。合掌礼拝。