第四十二段 強兵と強平
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成二十七年十二月八日の開戦記念日を前に
とある寿司屋に行きて、その主人の名刺を受け取り
歌を
「強兵」と いふ名の寿司屋の 主にて
名付けの親の 願ひを思ふ
と詠み、歳のころ八十を超えたる主人の親の世代なれば
「強き兵隊」になることを子供に望み
名付けたであらうと思ひけり。
戦後なれば「強く平和」を望みて「強平」と
名付けむであらうとの思ひに至りけり。
名前もまた、世相を映す鏡なりけり。