新編・伊勢物語 第四十一段 幡豆の山 星原二郎第四十一段 幡豆の山 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、或る日、商用にて 西尾市は幡豆の里へと向かひけり。 向かひて行く、途中にて歌を 雨あがり 洗はれ現はる 幡豆の山 石塚峠を 今日は越えゆく と詠み、雨のあ、あがりのあ、洗はれのあ、現れのあ、 などなどの「a」の音の頭韻を踏み さらに「洗は」と「現は」の同音異字の面白さに 日本語の持つ豊かさを改めて知らされにけり。