新編・伊勢物語 第三十八段 国宝の阿弥陀堂 星原二郎第三十八段 国宝の阿弥陀堂 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、西尾市吉良町にある、三河唯一の国宝 「金蓮寺の阿弥陀堂」を詣でけり。 鎌倉時代の創建にして かの源頼朝公の寄進と伝へられけり。 阿弥陀堂に参らむとせし時 守衛の如く猫ゐて 目と目 合ひたり。 しからば、歌を 国宝の 阿弥陀堂をば 護らむと 猫縁にゐて 睨(ね)めつけられつ と詠み、不審者にあらぬ旨の理解を得て 許可給はれば無事に参拝を済ませけり。