第三十五段 翡翠の狩
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、ある日 大阪城へと行きけり。
一通り取材を終へ
帰り際、池の畔にカメラマン数多ゐるを
見掛け好奇心に
駆られ近寄りけり。
カメラマンのあまた、一羽の翡翠を
撮影せむと狙ひてゐたり。
時の間に余裕あらば、しばし
その様子を眺め歌を
翡翠が 獲物をもとめ 水面へと
三度挑みて 三度目咥ふ
と詠み、誇らしげにカメラマンに向かひ
ポーズを取る翡翠に、その男も持ち合わせの
デジカメのシャッターを押しけり。