第三十四段 土竜の咎
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、ある公園で捕獲された土竜を見掛けけり。
土竜の罪は何であろうか?「田畑や公園を荒らす害獣」それが、土竜に付けられた罪状であろうか?しかしながらそれは、人間側の一方的な価値観と思ひけり。
土竜は土の中にあって昆虫類を捕食するしか生存の術はなく、それを否定されることは即ち生存権の剥奪に当たると思ひければ、歌を
捕らへられ 陽に晒されて 哀れなり
土竜の咎は 生きゐることか
と詠みしかど 衆人環視の中、
土竜を救出することは叶はざりけり。