新編・伊勢物語 第三十段 すすき野を行く山頭火 星原二郎第三十段 すすき野を行く山頭火 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、平成二十七年の秋の深まる頃 三重と奈良の県境に広がる 曽根高原へと行きけり。 行きて歌を すすきすすき すすきの原の 一面が 風に靡きて 山頭火ゆく と詠みけり。 見渡す限り広がり 銀の穂 煌めく すすきの原を行く まぼろしの種田山頭火を見しと 思ひけり。 その姿 網代笠を深く被りて ロイド眼鏡の奥の瞳 妖しきまでに光を放ちけり。