新編・伊勢物語 第二十九段 山葵田を流るる清水 星原二郎第二十九段 山葵田を流るる清水 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、秋の盛りを少し過ぎし頃 惚れたる女の誘ひに乗りて信州は安曇野の 大王山葵農園へと行きけり。 広き農園内を語りつつ そぞろに歩みけり。 歩みて女 いと水の清らかさに手を浸しけり。 男、その女の様をみて歌を 安曇野の 山葵田流るる 水清み 指(および)をひたす 仕草愛らし と詠み、山葵田を後にし安曇野の 隠れ湯の宿へと向かひけり。