第二十八段 離島の電話
昔、男ありけり。今も男ありけり。
その男、通信会社に勤めてゐたり。
明治の嚆矢以来、営々と先輩諸氏により築き上げられ
日本全国にある有人の離島の四百二十一
その全てに電話設備があり
普通に繋がりゐるを知りたり。
係る「普通」の状態になるまでには、
並々ならざる先輩諸氏の苦労の血と汗と涙を
流したであろう長き歴史を思ひけり。
また、その設備を今も日夜、休むことなく
守り続けてゐる保守系の社員の苦労に対して
敬意を表し、歌を
有人の 離島の数は 四百二十一
全てに電話 ありて繋がる
と 詠み 当たり前に何処でも何時でも
電話が繋がるその裏側の苦労に頭を下げけり。
そして、横浜のマンションの基礎工事の問題に対して
責任を持って当たり前の事を普通に施工せざれば
如何なる事態に直面するかを思ひ知らされけり。