新編・伊勢物語 第二十三段 五木の子守唄 星原二郎第二十三段 五木の子守唄 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、ある日、肥後の国の民謡「五木の子守唄」を 聞きて、その歌詞の一節いたく心に響き 歌を 汝(な)が死なば 誰が泣きて くれるやら 「裏の松山 蝉が鳴く」のみ と詠み、吾が死んだならば、誰が泣きてくれるやら と思ひしかば、子守娘にまして哀れと思ひ至りけり。