新編・伊勢物語 第二十二段 輪島塗箸 星原二郎第二十二段 輪島塗箸 むかし、男ありけり。今も男ありけり。 その男、バツイチなれど惚れたる女ありければ 能登は輪島へと女を誘ひ行きけり。 浮世の柵(しがらみ)ありければ、 共に暮らせぬことを互ひに自覚しにけり。 仮初の契りを結ぶべく、 名物の漆塗りの箸を買ひ求めけり。 その折 歌、浮かび来ぬれば、 能登に来て 輪島塗箸 夫婦箸 購ひたれど 夫婦(めをと)になれぬ と詠みて、来世の約束を誓ひけり。