第十九段 永遠の戦ひ
むかし、男ありけり。今も男ありけり。
その男、平成の或る年の朝、出社のため
自宅のマンションの玄関を出づる時
蜘蛛の巣 張りあるを知り
払はねば前へ行けぬ由
払ひ行きけり。
急ぎ行きつつ、歌を
張るものと 払ふものとの 戦ひは
とはに続かむ 蜘蛛と人とは
と詠み、<ha>と <towa>の音韻を
面白しと自画自賛しつつ
エレベーターへ乗り込みけり。
ちなみに蜘蛛は蜘蛛の巣を張るしか生きるための
技は無く内容に於ては
ご賛同いただけるものと信じけり。