新編・伊勢物語第十五段 和歌の才能 星原二郎第十五段 和歌の才能 むかし、男ありけり。今も和歌をなむ詠む男ありけり。 和歌の才(ざえ)に恵まれざれど詠み続けけり。 然れども、悲観するでもなく、苦しみて 詠むことを楽しみとせり。 かかる心境を、歌に 畳の上(へ)を のたうちまはり もがきては あがき苦しみ のちに生まるる と詠み、孤独を母として、苦悩を父として あらゆる芸術作品は生まるるものと 確信を深めけり。