『ヒロシ』#29
しかしオモシロくなくなったヒロシの事を他のクラスの奴らは知らず休憩時間によくイジリにきた
「キモシさんおつかれさまです!」
「ホント疲れたよ、オナニーのしすぎで!ちがうかハハハ!」
「……」
最悪の『ちがうか!』を言ってしまった
その一言で話しに参加してない奴らも固まってしまった
苦笑いしてるみんなをみてヒロシも苦笑いするしかなかった
しだいにヒロシはオモシロく無いやつになり、自然と小声になり自信もなくしてしまった
元々起用ではないヒロシには修復不可能、再びブツブツとにやける人間になっていった
だが運動会など一生懸命走ってる姿は誰よりもウケていた
しかしその笑い声とヒロシの間には距離がありすぎた
『笑われている』という現実も知らぬまま学生時代は過ぎるのであった。
つづく
『ヒロシ』#28
まさかのヒロシブームの中快く思わない奴がいた、そうヒトシである
今まで中心人物であったヒトシは静かなブームをつくってているヒロシが妬ましかった
今はヒロシのキャラクターでウケているが実際のところ笑いのセンスを持っているのはヒトシの方だった
なのでヒトシはオモシロくなるのも無くなるのも分析できる人間なのである
休憩時間ヒトシはヒロシに声をかけた
「よっ!人気者!」
「やめてくれよフフ…」
ヒロシは照れながら応えた
「ウケてるなあ、でもちょっともったいないかな?」
「!?…ど、どこが?」
ヒロシはムッとしながらも聞き返した
「お笑いって結構つっこんだりリアクションで笑い取るじゃん?だからヒロシもギャグ言った後自分でつっこんだらもっとウケるんじゃない?」
「でもオレ、ウケようと思ってねえし…」
「あ、ゴメン余計なお世話だったな!じゃ」
ヒトシはそう言って去っていった
「……」
ヒロシはヒトシの助言が気になっていた、なぜならヒロシもヒトシのセンスの良さをわかっていたからだ
そして再びクラスの男たちがヒロシをいじりはじめてきた
「キモシ、お前女性の下着はいてんじゃねえのか?」
その質問に一瞬ヒトシの助言を思い出した
「…はいてないよ、かぶってはいるけど?やめなさいって!ハハハ!」
「……」
すべった
男たちも改めていじり直した
「キモシの好きな飲み物は?」
「…アイスティー?いやパンティーかな?ヘンタイかっ!ハハハ!」
「……」
またすべった
知らぬ間に生徒たちは何かを思い出したように白々しく散っていった
教室の隅で女生徒に囲まれたヒトシはほくそ笑んでいた
「???」
ヒトシの策略にはめられたヒロシは気づかないまま再び暗黒の時代へと入るのであった。
つづく
『ヒロシ』#27
一人の生徒がおもしろ半分にヒロシに声をかけた
「おい『キモシ』!」
「…」
ヒロシは自分の事だと知らずに黙っていた
ムッとしたその生徒はもう一度呼んだ
「キモシ!ヒロシお前の事だよ!」
「!?」
ヒロシはそう言われやっと気づいた、その時点で
自分が気持ち悪いから『キモシ』であることも察した
しかし無視してもつっこんでも面倒くさくなるのは目に見えておりヒロシは自虐で返す事にした
「エーッ!オレ居たのバレてたストーカーの時はバレなかったのに…」
すると
「ブッヒャー!」
なんと思いもよらず
大爆笑された
「!?」
ヒロシは何のことだかさっぱりわからなかった
「ストーカーってやっぱりキモシだー!」
盛り上がる教室内、そこでヒロシは追い打ちをかけた
「みんな『キモタク』ってよんで!」
「ブッヒャー!お前タクヤじゃねーし!!」
またも大爆笑、暗黒の時代どころか小さな『キモシ』ブームも始まっていた
しかしヒロシは未だに気づいていなかった、ヒロシの顔には知らぬ間に笑みがこぼれていた
つづく