『ヒロシ』#23
ヒロシは基本的には暗いオタクではあるが
お笑い好きでもあった
それは今流行りの若者ウケする芸人ではなく昔ながらの演芸場に出てくるような芸人であった
なので、おふくろさんや行きつけの店の大将などはヒロシのつまらないダジャレや小咄など仕入れるといつも聞かされていた
例えばわざとらしく大将にプロ野球の話しをふる
「大将はプロ野球の球団はどこが好き?」
大将はまたきたかと思いつつも答えてやる
「オレは巨人かな?」
するとヒロシはニヤニヤして何かを待っていた
「?」
大将は不思議そうにヒロシをみると
「もう、オレがふったんだから大将も聞いてよ!」
大将も慌てて
「ゴメン!ヒロシさんはどこが好き?」
するとヒロシは待ってましたとばかりに
「ヒロシは(広島)カープ!ハハハ!」
「…ハハハ」
えてして空気の読めないやつは大将の愛想笑いにも気づかない
そしてお笑い好きのヒロシのもう一つの趣味はオチを当てることだった
新聞や週刊誌の4コマ漫画のオチの部分を手で隠し声に出してオチを言う遊びである
当たると「ヨッシャ!」とガッツポーズ
ハズレるとブツブツとダメ出しをする
異様な光景である
ちなみに正解率は一割ていどであった。
つづく