自分は椅子を用意した、座るときつくなるような奴だ。明後日の投げた方向に、昔見た懐かしい香ばしい風景が存在すると聞いて、いそいそと椅子を準備した。鉛色した感覚と混じった醸成が、きちんと整列した窓の中の風景を指さす。少し戸惑ったような感覚と、灰色の映像が、映像美と言わんばかりの態度で迫ってくる。自分はそれをぶん投げた。少々向こうに行ってくれないか。
ハンマーは用意された。自分はそれを振り下ろす準備をしています。しかめっ面をした秋の夜長に、味を占めた表情で月夜が座っていた。月と見えるにはあまりにふてぶてしい表情で。仕方ない夜空に星を撮し、あきれ顔をした本格的な明日は砲丸投げの姿勢で黙っている。
分厚い本を掲げ、午前が零時を示した。時計の針が右に回転し、右とは時計回りなのか、反時計回りなのか。正体を自分は知らない。スレイヤーの音楽が耳をつんざき、時計の針はそれなりの速さで時を告げていく。不可逆的な。時間の方向に明日と昨日が同時に、能面のような表情で座っている。自分はそれにハンマーを何にしようかと思いました。結局何もすることなく、夜は時間を告げて、凄まじい沈黙が恐ろしさを掃き散らして去って行く。自分はそれをハンマーを握りしめながら思うことしか出来なかった。せめてバールのようなものがあればよかったかな、バールのようなものを秒針にすればすっきりするのではないかと思いつつ。
消火器が家の片隅に座っている。期限が切れそうな、真っ赤な消火器だ。灰色の風景の中に、落ち着いてビビッドカラーの消火器が座っている。それにもハンマーがぶつかろうとしたが諦めた。そんな風景じゃない。夜中はもう少し灰色なのである。
ゆっくりと椅子に戻り、ハンマーを床に置き、絨毯の柔和な表情を確かめながら、明後日のことについて思案する。さて明日とは何時であっただろうか、と振り向きながら。自分は夜中を見る、しかし夜中は、秒針を右に動かしながら記憶を配列するだけだった。そこに意味を見いだすことが出来るのは、色を持たない感覚だけである。