大学病院での医療死亡群について昨日学会で発表/市民と医療者のパートナーシップ会議(医療事故41) | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

大学病院での医療死亡群について昨日(23日)学会で発表/
 市民と医療者のパートナーシップの準備会議
  (医療事故41)


1、日本衛生学会で発表しました

 予定通り、昨日(3月23日)、日本衛生学会(今回は東京工科大学(東京蒲田))で、
「大学病院で頻発する医療による死亡ー医の倫理の観点より背景と原因を探るー」
の演題で、複数の大学病院における医療死亡について発表しました。

 お聴き下さった皆様や座長および準備をして下さった皆様に感謝申し上げます。

 本記事の末尾に、発表のスライド内容の一部をお示しします。

2、一般市民への公開シンポジウム

 また、同学会では22日から24日までの毎日夕方、一般市民へも公開のシンポジウム(毎日1回で計3回)を開催していて、私は22日と23日の2回、聴きました。

 22日はアレルギー関連で、医療や医学などに詳しくない方には少々難しい内容が多いかなと、私には思えました。500席以上はありそうな大きなホールでしたが、ざっと見たところ聴衆は40〜50名くらいで、大部分は学会員かその関係者のように見えました。

 23日は、スポーツ庁の鈴木大地長官によるスポーツについての講演で、前日に比べれば聴衆は多かったのですが、同じ大きなホールでは空席が多い状況でした。

 東京23区内の駅近く(今回は蒲田駅から歩いて数分)での公開講演であっても、多くの方々に来て頂くにはかなりの工夫が必要なようで、別の学会関係で検討中の公開講演の準備にも参考にさせて頂こうと思いました(次の3)。

3、市民と医療者のパートナーシップの準備会議

 本日(3月24日)の学会出張の用務は午後2時までの扱いで、聴講を予定していた演題がほぼ定刻の1時55分頃に終わったため、2時頃に会場を出て、別の学会関連の市民と医療者のパートナーシップの準備会議(文京区で行われていました)に途中から出席して、先ほど夜に金沢へ戻りました。

 パートナーシップ準備会議では、医療事故調査制度がうまく機能しない原因や、その解決や改善のために誰に対してどういう情報をどういう方法で発信すれば良いかなども話し合いました。

 また、一般市民への公開講演についても、上記の衛生学会の公開シンポジウムの情報も加えて検討を始めました。

4、3月24日の日本衛生学会発表のスライド内容の一部

<1>
大学病院で頻発する医療による死亡
 〜医の倫理の観点より背景と原因を探る

     小  川  和  宏
   (金沢大学・医学系・分子情報薬理学)

<2>
対象

●金沢大学病院整形外科での死亡

  カフェイン併用化学療法(先進医療)で、
  死亡例を伏せて継続、教授ら書類送検
  後に、治療成績の過大報告や大規模倫理違反が判明

●群馬大学病院第2外科での死亡

  1人の外科医による内視鏡手術で8名死亡
  同じ執刀医による開腹手術で10名死亡も後に判明
  連続死亡を伏せて継続

<この間、金沢大学病院と群馬大学病院での死亡事案の概略を説明>

 金沢大学の事件は、本ブログの横浜講演スライド詳報などで、
https://ameblo.jp/iryouziko/entry-12204862579.html

群馬大学の事件は、「群馬大学 腹腔鏡 死亡」等での検索で、新聞記事などをご覧ください。

<3>
両大学病院の事案の共通点・類似点など

●倫理審査なしで実施や条件変更

●死亡例の未報告、治療成績の過大報告・宣伝

●不適切な説明、IC文書が見つからないなど

●死亡発覚後の大学病院側のずさんな対応

<4>
倫理審査なしで実施や条件変更

●金沢大学病院整形外科
  先進医療(混合診療)だが倫理審査なしで条件変更
  適格基準外の多くの患者に実施
    既に化学療法を受けていた患者は対象外だが
    投与済みの薬剤量を除外しゼロベースから投与等

●群馬大学病院第2外科
  保険適用外の手術を倫理審査なしで実施(先述)
  実態と異なる術式名での診療報酬請求が後に発覚
    「腹腔鏡下左葉切除」(当時、保険適用外)を、
    「左葉切除」や「腹腔鏡下部分切除」などで

(群馬大部分は、読売新聞・高梨ゆき子記者、東京シンポジウム2017.12.03資料より、一部を改変引用)

<5>
死亡例の未報告、治療成績の過大報告・宣伝

●金沢大学病院整形外科
  患者の出し入れで治療成績の過大報告と宣伝
  死亡例を伏せて同様の条件で治療を続行
  当時の病院長は整形外科前教授だったが公表せず
  厚労省へ通報されたり教授ら書類送検報道の後も
    治療成績の過大報告
    治療と死亡の因果関係なしと発表(後に認めた)

●群馬大学病院第2外科
  手術死亡続発を安全管理部門に報告せず続行
  成功例のみ発表

(群馬大部分は、読売新聞・高梨ゆき子記者、東京シンポジウム2017.12.03資料より、一部を改変引用)

<6>
不適切な説明、IC文書が見つからないなど

●金沢大学病院整形外科
  治療成績を過大に説明(先述)
  同意書が見つからない例が多数
  心機能が大幅急落して危険でも説明せず続行し死亡
   (遺族: 聞いてたら「止めて下さい」って言った
    主治医:中止すれば死亡回避の可能性高かった)

●群馬大学病院第2外科
   保険適用外の手術とは知らなかった
   体に負担が少ないからと勧められた
   ほかの選択肢を示されないか、ネガティブな説明

(群馬大部分は、読売新聞・高梨ゆき子記者、東京シンポジウム2017.12.03資料より、一部を改変引用)

<7>
死亡発覚後の大学病院側のずさんな対応

●金沢大学病院整形外科
  当該治療法のグループが治療成績の過大報告を続けた
  治療と死亡の因果関係なしと発表(後に認めた)
  倫理違反は調査し公表、大規模であったことが判明
  死亡事案の経緯や事実関係は公表せず(死亡後8年)

●群馬大学病院第2外科
  初めの調査委員会
    9回のうち8回は専門家など4名の学外委員欠席
  やり直しの調査委員会
    事実関係などを実質的に調査

<8>
医療安全・医療事故防止における倫理の重要性

●倫理委員会での審査や正直な報告、発表を
  死亡例を隠さない
  治療成績は適正な数字を(X 症例の出し入れ)

●治療法のデメリットや良くない経過も丁寧・迅速に説明
  代替法も含めてそれぞれメリットとデメリットを
  予想外や良くない経過は速やかに知らせる

●審査等のシステムに加えて、基本的な倫理観や常識を
  医学部学生の時期より涵養を
  しかし学生に教える側が・・・
    → 外部からの目や刺激も必要