医療事故23、告訴状受理後/金沢大学カフェイン併用化学療法死亡書類送検の横浜講演スライド詳報9 | 医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ

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医療事故死は年間2万-4万人と推計されており(厚労省資料)交通事故死の約4-8倍です。医療問題やその他の事件が頻発している金沢大学の小川が、医療事故防止と事故調査の適正化や医学部・大学等の諸問題と改善を考えます。メール igakubuziken@yahoo.co.jp(なりすまし注意)

医療事故23、告訴状受理後/金沢大学カフェイン併用化学療法死亡書類送検の横浜講演スライド詳報9

 前回は、カフェイン療法患者死亡事件を厚生労働省へ通報した翌日に、当時の先進医療専門官に翌日漏洩された国家公務員法(守秘義務)違反事件で、7月22日に提出した告訴状が8月3日に東京地方検察庁に受理されたことをお知らせし、告訴状全文を公開しました。

http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12187006167.html

  本日でその受理から3週間になりましたが検察庁から連絡がこれまで無かったため、検察庁のご担当の検事さんと本日(8月24日)電話でお話ししました。その結果、告訴状とそれに添付した証拠資料だけでは伝わっていない部分があると感じ、追加の資料や説明書などを急ぎ準備することにしました。

 犯罪行為(国家公務員法第100条の守秘義務違反の秘密漏洩)自体は、漏洩メールが国家賠償訴訟で被告国から公開法廷に提出された上、厚生労働省がその国家公務員法違反を理由として戒告処分をプレスリリースしていることなどから(漏洩メールとプレスリリースも告訴状に証拠資料として添付)、警察での捜査段階(刑事告訴はしていなかったが、漏洩メールとプレスリリースは情報として管轄の丸の内署へ提供した)から犯罪事実があったことについては疑いはなく、本日(8月24日)の電話でも、検事さんは、情状に関する追加の証拠や説明があればどうぞ、とおっしゃっていました。

 つまり、実質的には起訴か起訴猶予(犯罪行為はあったけれども汲むべき情状があるので起訴はひとまず見送る)かの判断ということです。ただし、7月22日の告訴状提出から1ヶ月以上が経ち、公訴時効まで残り1ヶ月少しですので、万一、現時点で起訴猶予処分になった場合は、検察審査会の審査はもう間に合わないと考えられる状況です。

 今回記事は、通報(翌日に上記の漏洩がされた)の元の事件である、金沢大学カフェイン併用化学療法での患者死亡で整形外科教授らが書類送検された件の、横浜講演のスライド詳報の9回目です。

 次の***間の事件概略は、前回と同様ですので、ご覧になった方は飛ばしてお進み下さい。

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 金沢大学が約27年前(1989年)に開発し、2010年当時はまだ「先進医療」に認定されていた「カフェイン併用化学療法」という、抗がん剤にカフェインを併用する治療法で、それほど進行していないがん(手術で原発巣が除去ができて、画像診断で遠隔転移が認められなかった、骨肉腫という骨のがん)の16歳少女が、併用投与の約11日後に死亡し(2010年3月)、遺族が整形外科教授ら医師3名を、業務上過失致死罪で刑事告訴しました。
 
 致死性の心毒性を持ち、心機能異常では禁忌(投与してはいけない)と医薬品添付文書(医療者向け説明書)に明記されているアドリアマイシンという抗がん剤と、カフェインの併用投与を、心機能が大幅に急低下した検査結果が出た後も行って、その約11日後にアドリアマイシン心筋症による心不全で死亡したものです(次のスライド162)。

162

 2013年10月1日に、私がこの死亡事案などを厚生労働省に通報したところ、翌日、中谷大作・先進医療専門官(当時。後に、国家公務員法第100条(守秘義務)違反で戒告処分を受け、その直後に大阪大学病院循環器内科に戻った)により土屋教授へ通報者情報を漏洩され、厚労省課長補佐による私への虚偽説明などを経て、2014年9月1日、国(厚労省)と中谷氏個人を被告として損害賠償訴訟を提起しました。

 この提訴の10日後に、厚労省は、「カフェイン併用化学療法」の先進医療認定を取り消しました(それまで、記者や私が尋ねても「取り消さない」と突っぱねていたのですが)。また、その後、治療成績の過大報告を行っていたことなども判明しました。

●医療維新2015.6.5記事
「金沢大、先進医療全停止相当と見解、厚労省 カフェイン併用療法めぐり、有効性過大報告などの問題」より一部を引用

http://ameblo.jp/jpmax/entry-12041590691.html

 上記の私と国、中谷被告との訴訟で、被告国は、中谷被告が漏洩したメールを乙1号証として証拠提出して、漏洩行為自体は認めていますが、それ以外の幾つかの点は争っています。

●医学部大学等事件17
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12142040963.html

 患者急死から6年以上、厚労省への通報と漏洩から2年半以上、金沢大学病院が死亡事案を倫理違反とは別の新たな調査委員会を立ち上げて調査すると記者発表してから1年半以上が経ちましたが、未だに死亡事案の事実関係の調査報告が見当たらない状況です。

 今回や一連のスライド詳報でお示ししているのは、次の横浜講演のスライドです。

●神奈川県保険医新聞、2016.1.25

神奈川1
神奈川2
●スライド詳報1
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12123583469.html

●スライド詳報2
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12126207325.html

●スライド詳報3
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12129189641.html

●スライド詳報4
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12134221661.html

●スライド詳報5
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12144208962.html

●スライド詳報6
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12147485745.html

●スライド詳報7
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12179289207.html

●スライド詳報8
http://ameblo.jp/iryouziko/entry-12185416639.html


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カフェイン療法死亡横浜講演スライド詳報9

 以下が、今回のスライド詳報9です。

(1)アドリアマイシンの投与総計が500mg/m2あるいは550mg/m2を超えないという基準に対して、金沢大へ転院前に160mg/m2の投与が既に行われていたにもかかわらず、通常のはじめから行なう量で実施して、総計が628mg/m2になる計画で行っていて、約500mg/m2投与の時点で急死したこと。

(2)死亡翌日に、主治医がご遺族に、最後の投与で強く心毒性が出て死亡したこと、最後の投与を行なわなければ生きていた可能性が高かったこと、などを説明している録音。

(3)カフェインがアドリアマイシンの心毒性を増強するという論文(1995年発表)。

(4)カフェイン併用化学療法での生存率が100%であるという、土屋教授らの論文。

などについてです。

●スライド145、部分もくじ(総量規制500mg/m2)
(前回の詳報8に、500mg/m2記述の研修医向け教科書など)

145
●スライド148、カフェイン療法の投与の流れ
148
●スライド149、京大での160mg/m2がカルテに明記
149
●スライド150、金沢大学での投与量、計628mgの予定
150
●スライド152、心機能急落図(アドリアマイシン投与量と心機能)
152
●スライド153、死亡翌日の説明の録音1
153
●スライド154、死亡翌日の説明の録音2
154
●スライド155、部分もくじ(心毒性増強と作用機序)
155
●スライド157、アドリアマイシンの心毒性増強の論文(1995年)
157
●スライド159、1年生教科書(作用機序)
159
●スライド161、生存率100%という土屋教授らの論文
161
●スライド162、心機能急落図(アドリアマイシン投与量と心機能)
162
●スライド164、先進医療の審査やフォロー
164

(つづく)