四度、脱獄を決行した男
佐藤幹夫演出、吉村昭原作
緒形拳様、津川雅彦様、中井貴恵様、佐野浅夫様、玉川良一様、
趙方豪様、織本順吉様、なべおさみ様他
「奴は今まで命がけで逃げることだけを考えてきた ――」昭和8年、青森。
佐久間は質屋に盗みに入り、逃げる途中、
仲間を助けるために、店員を切り殺す。
2年半後、捕まり、無期懲役を言い渡され収監される。
自由のない刑務所の中で佐久間は看守に憎悪の念を抱き続ける。
ある朝、看守の鈴江が佐久間の独房をのぞくと、鍵が外れている。
四度という未曾有の破獄を繰り返すことになる佐久間の最初の脱獄だった。
(Amazonより引用)
「ドラマスペシャル」としてNHK総合テレビで
1985年4月6日の21時から22時30分にスペシャルドラマとして放送された。
2017年にはビートたけし様主演でドラマ化。(テレ東だからいいかも。)
4度の脱獄を実行する準強盗致死罪による無期刑囚。
実在の脱獄犯で「昭和の脱獄王」と呼ばれた白鳥由栄(しらとりよしえ)
元受刑囚(1907~79)がモデルとされていて、
28歳から54歳までの26年間獄中生活を送った後、71歳で亡くなられてます。
今のデジタル時代ではあり得ない?けど、
網走刑務所からも脱走自体は成功しているのが凄い。
脱走にかけては、限りない執念と知恵があったんですねえ。
身体を踏ん張って壁を蜘蛛のように登ったり・・・
脱走自体は成功させるんだけど、これは現代の方が人に紛れ込めるかも?ですが、
外に出たものの、その後が毎回あっさり?捕まってしまう。
食べ物がそもそも手に入らないし、盗んだらそれで捕まる。
脱走の度にひどくなる刑務所での環境も、もちろん動機のひとつでしょう。
でも、行ったら捕まるのは決まってる妻子の元へ行ったことも。
ついそこに、娘の姿、声をかけたくてかけたくて、でも警官が居る。
初めの脱獄の時の看守さんは責任を取る気持ちで辞職し、他の刑務所に再就職。
巡り巡って、7年後(だったと思う)、まさかの再会。また担当に。
(笑うところではないのに「気の毒に~」とぷふっと来てしまう津川様の表情)
壮絶な脱獄防止策と脱獄への執念が火花を散らす。
遂には、二人の間に、微妙な心のつながりが生まれる?
これ以上出来ないだろうという位の手かせ足かせしても、
執念の脱獄は、彼が脱獄して退職した看守の家に出頭?するまで続く。
どうするかお前が決めてくれという問いに「自首して模範囚になれ」。
年月は経ち、模範囚となっていた時に、既に成人し、結婚もした娘が、
初めて面会に来る。脱獄してすぐそこに姿を見ても会えなかった娘。
彼女に、出所しても自分たちとは一切関りを持たないで欲しい、
それが一番だと言われる。
実際に釈放された時に迎えに来てくれたのは、看守だった。
お互いに老いた、26年の時間の流れ。周囲の景色は全く変わっている。
お正月は、看守さんの所で。貰ったお小遣いはお守りに入れてらしたとか。
全て家族の為・・・自分が脱獄犯になってからは離婚も。
お墓には、面会に来られたお嬢さまが、命日にはいたしてらしたとか。
人の世は、どこでどうなるか・・・
食べる為に犯罪まで犯す時代は戦争へと繋がる。
でも、今起きている戦争の目的はより以上への「欲」?
『パラサイト』ではないけれど、現代にそれだけの頭脳があれば、
現代なら家族を充分に養えたはず。
人生に「もし」はないけれど。
緒形拳様がまだぎらぎらした役者でいらした頃の作品は、
やはりよいですね。