『Saul fia(サウルの息子)』(2015)の辛すぎる現実 | 時は止まる君は美しい

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巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

 

ナチスに関しては・・・

 

ネメシュ・ラースロー監督作品、ハンガリー、107分

 

 

 

ルーリグ・ゲーザ様、モルナール・レヴェンテ様、ウルス・レヒン様、ジョーテール・シャーンドル様他

 

 

ナチス収容所を描いた映画は、数知れず。

しかし、その中でも、一種異様印象を持って、リアルに描かれた作品。

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所。ゾンダーコマンド

虐殺作業等を手伝わされ、3カ月から1年処刑されていた、

囚人の呼び名。サウルはゾンダーコマンドだった。

仕事の内容が内容なので、他の囚人から離して収容され、

その環境は、比べると優遇されていたようです。

 

 

しかし、近い将来、自分達も殺されることを自覚しながら、

運ばれて来る同胞たちを、嘘をついて裸にし、

ガス室に詰め込んでドアを閉め、断末魔を聞き、

遺体を運び、掃除をし、衣類から金品を探し、燃やされた遺体の灰を処分する

心を生かしていては、とても正気でいられない気がする。

 

 

 

彼らに命令・罵倒するナチスの兵士は、自らはそういう仕事はしない。

 

 

それでも脱走や、レジスタンスとの合流計画が存在も。

 

 

その限られた空間でのリアルさを描き出すために、

撮影は、35mmフィルムで行われています。

 

 

 

 

 

各国から送られて来る囚人の言葉に関しては、

サウルはユダヤ系ハンガリー人なので、ハンガリー語、

その他合わせ八か国語もの囚人が描かれ、

日本語吹き替え版は、ハンガリー語のみ吹き替えで、

多国語は、そのままで収録されているそうです。

 

 

それらはすべて、現実に起こったこと。

今、それを書いていても、背筋がぞっとするのに、

高名な雑誌での批評に「並外れた集中力と度胸のホラー映画」とあった。

 

 

ホラー映画。架空の状況の話しではない。

そんな形での高評価世間に通るのは間違いでしょう。

 

 

 

サウルは、自分の息子と思われる遺体を見つける。

なんとか、手に入れて、正式に埋葬したい。

憑かれたように、ラビを探し、遺体を隠し持つサウル。

 

 

そんな時に、遂に自分達の処刑が近いことが解り、

脱走計画実行に移される。

 

 

少年の遺体を抱え、共に逃げるサウル。

サウルの表情は、常に押し殺されていて、無表情ようです。

そのサウルが、一度だけ、記憶の隅にあるような、

笑顔を、口元に幽かに浮かべる場面、

一層に胸が痛みます。

 

 

ナチス集団として特殊ではあるけれど、

戦争が行われる時、行われる現実は、通じるものがあるでしょう。

 

 

この作品は、映画作品であると共に、ドキュメンタリー的な印象すらあって、

心がサウルに共鳴する強さは、

かなり精神力が必要でした。消耗する作品です。

 

 

部屋に、にゃんずが「暑い~」とごろごろしてくれているのが救い

でも、戦時下「ペット」に食品を与えるなんてとんでもないと、

殺傷を命じたのが日本だったことも想い出します。