再掲:第三百九十夜・『陽暉楼』 | 時は止まる君は美しい

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巡りあった美しい人達の記憶を重ねます・・・
B面ブログ「扉・鎧戸・宵の口」も始めました。

2015年3月27日

 

競ってこそ華・・・しなやかに儚く・・・

 

 

女衒の太田勝造(緒方拳様)と駆け落ちし、追っ手の手にかかり死亡した、

豊竹呂鶴(池上季実子様二役)の間に生まれた娘、芸妓・桃若(池上季実子様)。

土佐は高知、随一の遊興、社交の場、陽暉楼の華と育つ。

育ての親は、母の恋敵、お袖(倍賞美津子様)。

父は後添えを持ちながらも、珠子(浅野温子様!)という若い女を大阪で囲っている。

そして始まる遊郭を舞台にした人間模様。 



 

生粋、芸子の王道を行く、桃若。ぞくぞくする美しさ。 

伝統なんて何のその、現代風でコケティッシュ、負けん気で突っ走る珠子。

そうでなくても呂鶴のことを、今も心に秘める勝造に「くううっ」ときているのに、

陽暉楼で、桃若に鼻であしらわれ、爆発。きーっ、玉水で女王様になったるで~!?



 

呂鶴の最期。とことん、お美しい池上季実子様。芸の道が似合われるお方ですわあ。

一頃、財界の大物の愛人説が流れてましたが、さもあろうというお色気でした。 


駆け落ち相手を殺められた頃とは、こちらも違います。

今や「女衒の大勝」の異名を持つ、緒方拳様、はまり役。

自分の愛人が娘にコケにされても、今や愛した女そっくりの娘は、 

華麗なる佐藤勝様の音楽を背景に、妹分の芸子たちを引き連れて芸子の筆頭に。

映画をご覧になった方は、写真だけで、頭の中に、あのテーマ音楽が流れるのでは?




 

大物たちを相手にプロフェッショナルに仕事をこなす桃若。 

それでも、彼女も一人の若い娘。まだ恋も知らない。


 

水揚げ。桃若の瞳が哀しい。

 


Yokiro

 

やる気満々の珠子さんは「お父ちゃん、うちを高こう売ってえや!」鼻息荒い~。 

しかし、これも、人情派で気のいい娘なんだなあ。 

des geishas (1983).


 

まあ、それぞれが、それぞれの仕事に人生に、忙しく立ち働いているうちに、

世の中、本当に怖いのは人の欲とお金! 

日常通りに流れているようで、欲の皮は、大阪からまで、びよ~んと伸びて来る。

あの手この手の陽暉楼獲得への動き。本当に、物欲・権力欲は人をどれだけ醜くすることか。

そして、どれだけの不幸を生み出すことか。




 

さて、桃若様は、銀行の副頭取をしている若さんに、生まれて初めて心を揺さぶられる。

そんな一行で乗り出したダンスホールで鉢合わせる桃若と珠子。

そりゃあもう、火花どころか、打ち上げ花火が上がります。

そして、化粧直しをしている桃若の所に、珠子出現! 

 



 

この取っ組み合いの長廻し(15分!)だけでも、見る価値有りますわあ。

カツラは吹っ飛ぶ、水道管から水は吹き出す、女の力づくの喧嘩も、 

このクラスがやれば、男並み?で、任侠ものにありがち?二人の間に生まれるものあり。


 

桃若は、その足で、若さんとの逢瀬に・・・珠子との一件で、ずぶ濡れのまま。

抱かれながら、蓄音機のハンドルを回す桃若。一生一度の泡沫。幸せな時間。 

 

そして旦さんではない、若さんの子供を宿す桃若。 

若さんはヨーロッパにお旅立ちに。

秘密なんて筒抜け。「どうするのよ、産むわけにはいかないでしょう!」プレッシャー攻め。


 

自分の子供として認知しようとしていたパトロンに、事実を打ち明け、「何故、それを言う!」

自滅の道を選び、正直に進み、娘を産む桃若。出産の後、結核を患い、

母と同じく、若くして命を落とす・・・


 

その娘も、お袖の元で、彼女と同じく芸者に育てられることだろう。 


 

勝三の希望を入れてつましく結婚し、夫婦で料理屋をしていた店も、

大阪方に潰され、夫を殺される珠子。

敵への仕返しに向かう勝蔵。「お父ちゃん、帰って来てえや、うち、待っとるで」

新しい生活へ勝蔵と出発しようと、珠子は駅で待ち続ける。

勝蔵が刺されこと切れても、駅から人が消えて行って、夜が来ても、珠子は待ち続ける。

 

相当駆け足のあらすじ。本当、荒い筋だわ~。

本当は、陽暉楼の女将の武勇伝とかも、見どころ。未見の方は是非。

いい女盛りだくさんです。宮尾登美子様原作ですので。 

 

五社英夫監督。スクリーンサイズの映画、最期の時代の大物のお一人?

Fujio Morita

 

五社監督作品の数々の他、「大魔神」(1966年)、「本陣殺人事件」(1975年)

「金閣寺」(1976年)、「序の舞」(1984年)、「利休」(1989年)、

テレビ横溝正史シリーズ「犬上家の一族」(1977年)、「真珠郎」(1978年)等、

名作の数々を撮影してこられた、撮影監督、森田富士郎様と五社監督。 


 

今はもう、新作を拝見できないのが悲しいけれど、少しでも、リアルタイムに拝見出来た、

有難い、五社監督映画です。

 

記事を書いていて、「百聞は一見に如かず」と思ってしまう・・・

そんな「映画」・・・