存在自体のアート
（普通は猫がオッドアイ。この方は人がオッドアイ）
かつて、デヴィッド・ボウイ様が、
Serious Moonlight Tour を行われた時の、
写真集が手元にあります。
その中にステージだけでなく、バックステージや、
街頭で撮られたものも、多くあり、その所作、
佇まいの美しさに驚きます。
リンゼイ・ケンプさまにパントマイムを習っておられたそうで、
天性のものに加え、身体全体での動きの美しさを
身につけておられて、「存在自体が美になる人」、
という人間がいるんだと、感じました。
そんなお方の映画を数本・・・
１９７６年、ニコラス・ローグ監督作品「地球に落ちて来た男」
地球に落ちて来た男の話しです。
美しく哀しい映画。
沢山のテレビに囲まれて画面を見られてらっしゃるシーンと、
異性人であることを隠す為のコンタクトレンズに関するシーンが、
強烈なヴィジョンでした。
１９７８年デイヴィッド・ヘミングス監督作品
「ジャスト・ア・ジゴロ」
本当はこの一本で記事にしたかった映画ですが、
写真が集まらず、断念。
マレーネ・ディートリッヒ様の、最後の映画出演作です。
サントラ盤もとても面白い。ディートリッヒ様と、
ヴィレッジ・ピープルの「ジャスト・ア・ジゴロ」が、
聴き比べられる、贅沢なしかけ。
真面目な青年が、時代に翻弄され、
恋人を失い、ジゴロになり・・・運命に流されてゆく姿が、
ラストシーンまで、哀しく心に残ります。
唯の、ジゴロさ、
何処へ行ったって、
人は、知ってるのさ、
僕が演じてる役割を。
お金を貰って、踊って、
売ってるのはロマンス、
夜毎、何らかの心が、
裏切られる。
いづれ時が来るさ、
君は居なくなる、
で、何を人は言うのか、
君のことを、
その終りが来たら、判ってる、
人は言うのさ、
お前は唯のジゴロだって、
そして、人生は続くのさ、
君がいなくとも。
１９８３年、トニー・スコット監督作品「ハンガー」
タイトルは、「渇望」・「飢え」の意味。
のっけ。いきなりバウハウスのライヴ演奏からスタート。
全編、場面ごとにシューベルト、ドリーブ、ラヴェル等が彩ります。
本当に、色々な役に挑む好奇心は、ドヌーヴさま、天下逸品。
古代エジプトから生き続ける吸血鬼ミリアム。
カトリーヌ・ドヌーヴ様とデヴッド・ボウイさまの人間離れした、
美しいカップル。はい、バンパイアだから人間じゃないか。
二人は、妖しい魅力で、ひと組のカップルを誘惑。
こんな時代に、ミリアム・ドヌーヴ様に誘惑されて、
吸血鬼になったジョン、ボウイ様。
「食事」（連れ込んだカップル）の後は、二人でお風呂。
そんな二人の歴史的日々は「フォアエバー・アンド・エバー」に、
続く筈だった。このセリフを、映画館版の字幕では、
「時ある限る永遠に」と訳されていたのが印象的。
ＤＶＤでは訳が違って、かなり残念。
そして、ある日突然、ジョンに老化が現れ始める。
「時ある限り永遠ではなかったのか！」
と、豪華な邸宅の中で叫ぶジョンの声。
この映画でのドヌーヴ様は、終始かっちりと隙のない装い。
髪が乱れても、一糸乱れぬみだれ髪といった演出。
それが、ある意味、ラストに至る伏線のように思われます。
ちなみに、ドヌーヴ様のご衣裳のみは、
もちろん、イヴ・サンローラン様。
どんどん老化が進み、かつ「飢え」にさいなまれるジョン。
「殺してくれ、ミリアム。死なせてくれ。」
「わかっていないのよ、あなたは。私達に死はないのよ。
暗がりの世界で私たちは一生何かを感じ続けるのよ。」
この映画のメイクアップアーティストがディック・スミス様。
あの「エクソシスト」や「ゴッドファーザー１・２」「小さな巨人」
などのメイクを手掛けた天才です。
一挙に何百年も老けこむ、ジョンのメイクのすさまじさ。
で、ジョンがとどまらない時に押し流されている時・・・
ミリアムは、ちゃっかり、次のパートナーをゲット。
今度は女性。実に手際よく誘惑され、
どさくさで吸血鬼にされてしまうのは、
老化に関する研究をしているサラ（スーザン・サランドン様）。
ジョンはどうなるのか、サラはどうするのか、そしてミリアムは？
ミリアムは孤独なのか、残酷なのか・・・
「ドラキュラ映画」としては、かなり特殊な１本。
当時、サラ役にスーザン・サランドン様は？と思いましたが、
今、見直すと、いい角度のキャスティングな気がしてきた。
あら、「ジャスト・ア・ジゴロ」とコピーが被ってますねえ。
１９８３年、大島渚監督作品「戦場のメリークリスマス」
追想シーンで、まさかの学生姿をご披露くださいました。
坂本龍一先生、初々しいというか、演技今一でしたが、
全編に流れる音楽が、映画を忘れ難き作品に。
主題曲は、デヴッド・シルヴィアンさまの、
ヴォーカル入りでも録音されてらっしゃいますね。
このシーンと、ビートたけしさんのラストシーン。
やるせない中に、それぞれの「生きざま」が刻まれて、
きっぱりとしたものがあった。
映画を独特の色に染め上げる、デヴィッド・ボウイ様。
「プレステージ」でもお会いできてうれしゅうございました。
指先ひとつまでに至る動きに惹きつけられる時間を、
また、与えて下さる日を、お待ちしております。
おまけ❤