ノルウェイジャズでも開拓するか。と、レーベルのサイトで試聴してすぐにピンと来たのが購入のきっかけです。気ぃついたら試聴を繰り返すこと20回以上。とにかく聴いてて気持ち良かったんですね。で、入手して聴いたとたん、あんだけ試聴しまくってたにもかかわらず1曲目でえらく感動してしまい、アルバム全編でそれはそれは鮮烈な印象を受けました。
リーダーのOLA KVERNBERGは知らんなと思っていたら、TRONDHEIM JAZZ ORCHESTRAのメンバーだったんですね。確か土中保存のドングリん中にそれが混じってるからあとで聴いてみよ(汗)メンバーのEirik HegdalとOle Morten Vagan以外は知らない人たちばかり。そのうえダブルカルテットにトランペットという9人編成ですからミュージシャンの聴き分けなどはちゃんと出来ませんし、本作の素晴らしさを言葉でうまく表現出来るかどうかも分かりませんが、書いてみることにしました。
Jazzlandといえばノルウェイで最も先進的なジャズレーベルで、フューチャージャズのイメージが強いかもしれません。が、本作のサウンドはアコースティックが主体であり、エレクトロニクスは音楽の美を創り出すための手段として必要最小限の範囲で用いられています。
バイオリン、ビオラ、トランペット、サックス2人、ベース2人、ドラム2人、という非常に珍しい編成による演奏は、熱いアドリブソロやフリーインプロを楽しめるという点で紛れもないジャズなのですが、バイオリンとビオラがいてベースもアルコを多用していますので室内楽的な趣もあります。まるでメンバー全員が音の糸を紡いで創り上げる繊細で美しい織物のようだと感じるアンサンブルには強烈な印象があり、入念で緻密なコンポジションと誰にも似ておらず誰も真似出来ないであろう唯一無二の音楽性によって、普通のジャズとはかなり趣が異なっています。まあ、そもそも私がこうしてここに書くということは、普通のジャズなどではないわけですけども(笑)
本作は、8曲全てリーダーのOLA KVERNBERGによるオリジナルでプロデュースも本人です。彼の演奏と作曲はもちろんのことリーダーとしての力量も際立っており、実際に音に触れると、これらの曲にこの編成と人選は必然であったろうと想像が出来ます。それから、本作にBjorkの影響を感じてしまうのは私だけでしょうか?ま、それはさておき、ジャズとかポップスとかいうジャンルを越境したところで音楽の普遍的な美しさを持つ作品に仕上がっていて難解さも無いという点において、先ずはこのアルバムを高く評価したいです。
1曲目のLiarbirdの美しさを言葉で表現するのは難しいです。ルネッサンスの名画じゃあるまいしそんなこと言われても...と笑われそうですが、今にも天空から一条の光とともに天使(天女でもいいけど)が降りて来るんじゃないかと思えるほどの繊細極まる壮麗な室内楽的アンサンブルは感動ものです!バイオリン、テナー、トランペットが、優しく温かい音色でソロを綴って行くと幸せすぎて涙が出そう。
2曲目のBoogは、雄大なサウンド。優雅な宮廷音楽のようでもあり、そのオリエンタルなムードがたまらなく良い。
3曲目のBuon'Animaは、嘆きと悲しみを表現しているのでしょうか。中間部はフリーとなりしだいに激しさを増す。
5曲目のViljeは、神々しいとさえ感じるほどの美しさと安らかさ。いや、もちろん行ったことありませんけどね、天国ではきっとこういう音楽が流れてるんとちゃうかなあ。トランペットソロの安定感抜群な丸みを帯びた音色のなんと柔らかで美しいこと。
やはり室内楽的な雰囲気を持つ6曲目のOleroは、ラベルのボレロを聴くのに似て、脈打つような一定のリズムに乗せた同一メロディーの反復が続く中、楽器が入れ替わり立ち替わりしつつ趣が刻々と変化して行くのを味わう曲。
ジャズロック色の濃い7曲目のCobbは、ドラム大活躍にChris Squireが乗り移ったかのようなエレベ。テナーソロも激しく盛り上がり、バイオリンソロ以降はまるでプログレのようじゃありませんか。後半ガラリと趣が変わってトランペットソロが入りさらにテンションが上がると鳥肌ものでっせー!この曲に限りませんが、Mathias Eickのトランペットの音色は実に美しく安定感が抜群で、そのうえ、瞬時にその音色をマットにも艶々にもいかようにも自在に変化させられるという技術に秀でていて凄いです。
8曲目のSpannungは、波打つような3拍子にエレクトロニクスを配したシンフォニックなサウンド。幻想的で心安らぐといった感じでしだいに盛り上がりやがて静かに締めくくられる。
ちなみに、このアルバムは2011年にリリースされ、同年度のSpellemann(ノルウェイのグラミー賞)のジャズ部門で賞を獲得しています。公的機関がジャズを多方面からバックアップしているノルウェイでは、ジャズミュージシャンが育つ環境が整っているものと思われ、実際に優秀な若手ジャズミュージシャンを多く輩出していることから、今後もノルウェイジャズに注目せねばと思っています。
最後に、開設の3年後くらいから私がちょくちょく訪れて現在進行形ジャズの情報源として参考にしている有用なホームページがありますので、もうご存じのかたも多いでしょうけれど、この機会に紹介させていただきます。
http://www.grinningtroll.com/
本作とそのメンバーに関してはここに詳しく書かれていますので、ぜひ参考になさってください。
http://www.grinningtroll.com/pickup/pickup201105/pickup201105.htm
御用とお急ぎでないかたは、Ola Kvernbergのホームページへどうぞ。
http://www.olakvernberg.com/
Jazzland Recordingsのサイトで本作の試聴が可能です。
http://www.jazzlandrec.com/
■ OLA KVERNBERG / LIARBIRD (Jazzland Recordings 278 342 6)
Ola Kvernberg (violin, bass violin, viola, acoustic guitar, mandolin, double bass, piano, percussion, vocals)
Bergmund Waal Skaslien (viola, vocals)
Eirik Hegdal (soprano, sopranino and baritone saxophone, vocals)
Mathias Eick (trumpet)
Hakon Kornstad (tenor saxophone, flutonette, vocals)
Ingebrigt Haker Flaten (double bass, electric bass, electronics, vocals)
Ole Morten Vagan (double bass, vocals)
Erik Nylander (drums, percussion)
Torstein Lofthus (drums, percussion)
入手先:Amazon(通販)