MIKE HOLOBER / CANYON | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

本作は、2001年録音で2003年にSons Of Soundからリリースされています。全9曲のうち7曲がリーダーのMIKE HOLOBERのオリジナルで、2曲がスタンダードとなっています。
レーベルも初めてならMIKE HOLOBERというピアニストも全く知りません。TIM RIESとWOLFGANG MUTHPIELの名前と担当楽器だけおぼろげながら記憶にあります。BRIAN BLADEなら知ってるもんね~と思っていたら、なんと全然違うドラマーと勘違いしてました(笑) ということで、私がちゃんと知ってるのは、欧州アーティストとの共演もあるSCOTT COLLEYだけです。

1曲目のCANYONは、静謐で美しくも雄大なスケール感のあるテーマにイマジネーションが喚起され、アップテンポで盛り上がると、そのままぐんぐんと演奏に引き込まれてしまいました。各人のアンサンブル、ソロともにレベルが高く、初めて聴くBRIAN BLADEのドラムにはすぐに釘付けに。MIKE HOLOBERのバッキングも光っていますねー。アレンジも良く、静と動のメリハリが効いて聴き応えは満点です。
2曲目のANSEL'S EASELは、軽やかな雰囲気でありながらちょっぴり切なさのある素直で美しいメロディがステキ。優しく暖かい音色のテナーが◎。良く歌うベースソロも聴き応え満点でピアノソロもステキ。多彩な技で好サポートのBRIAN BLADEも光る。
3曲目のHEART OF THE MATTERでは、静かで雄大な空間の広がりを感じる音作りが印象的。優しく綺麗なテーマメロディをソプラノが柔らかな音色で丁寧に綴ってゆき、やがてアドリブソロに入ると次第に熱く盛り上がりを見せ、ギターのソロもベースラインも◎。この曲では、リーダーのMIKE HOLOBERはテーマもソロも受け持たず完全に脇役に徹しているのですが、綺麗な響きを生かしたバッキングの付け方などなどとても印象に残りました。作曲、アレンジともに秀逸で、聴き応えのある演奏に仕上がっています。
4曲目のSAME TIME, SAME PLACEは、少々複雑でかっこいいテーマ。急速調の4ビートで、ギターやソプラノのソロもイケイケで熱く、MIKE HOLOBERのピアノソロも◎。それにしてもスピード感抜群で演奏をぐんぐん引っ張って行くBRIAN BLADEのドラムが凄いなあ。
また、少々ダークで重々しいスローテンポな5曲目のROC AND SOFT PLACEや、8分の6拍子で軽快に駆け抜け、明るく爽やかなムードを持つ6曲目のSPINも良いですね。
あの~、突然で恐縮ですが、アーティチョークはテナーがテーマメロディを受け持つスローバラードがもの凄~く苦手です。だって、ほら、アナタにも一回ぐらい経験あるでしょう?まるでムード歌謡みたいな演奏でゲンナリ(∋_∈) というようなことが(笑) でも、7曲目のIN SO MANY WORDSは許せちゃうのだ。テナーは素直に歌ってるし、ピアノはソロもバッキングも綺麗だから。
それから、正直を申しますと、最後の2曲のスタンダードはいっそのこと無いほうが統一感があって良かったのではと(私は)思いました。

リーダーのMIKE HOLOBERのピアノは、まず、詩情豊かで美しい演奏が印象的。アグレッシブな場面で目が点になるほどの超絶技巧を披露するというわけではありませんが、モーダルな場面でもトゲトゲせかせかしたところが無く演奏に品性があってとても好感を持ちました。また、彼は本作のリーダーでありながら前面に出ることは少なくてTIM RIESやWOLFGANG MUTHPIELに主役を譲る場面が多いと感じたのですが、綺麗な響きをもつ実に多彩でアイディアに富んだバッキングに音楽的センスと手腕が発揮されています。優れた作曲能力に加えアレンジのセンスが抜群で丹念な音作りになっており、各人の演奏レベルも高度で聴き応えは満点です。

それから、BRIAN BLADEっていう人は、ドラマーとして実にいい仕事をする人なんですねー!ソリッドで隙が無く、多彩な技でもって静と動にかかわらずどんな演奏でもがっちりとサポートしているので存在感は抜群。決して出しゃばることが無いし、と、もう聴いてて凄~く気持ちいいです。もしもBRIAN BLADEの演奏が好きでないという人がいたとしたら、その人はおそらくドラムという楽器が好きではないのだと思ってしまったほど。で、少し調べてみたら、BRIAN BLADEの新譜が出てるじゃありませんか。こいつぁー気になるなぁ~。

今回は、ジャズ友のNさんがくださった盤が予想以上に良かったので、新譜ではありませんが書いてみました。NYジャズにもこんなにステキな作品があるんですねー。知ってるつもりで別人と勘違いしてたBRIAN BLADEのことを本作でちゃんと知ることが出来たのもラッキー(笑) Nさん、ありがとうございました!
SCOTT COLLEY
BRIAN BLADE
http://www.brianblade.com/

■MIKE HOLOBER / CANYON (Sons Of Sound SSPCD 016)
MIKE HOLOBER (p)
TIM RIES (ts, ss)
WOLFGANG MUTHPIEL (el-g)
SCOTT COLLEY (b)
BRIAN BLADE (ds)