[em] WOLLNY, KRUSE, SCHAEFER / [em] II | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

本作はドイツのレーベル、ACT Music+VisionでYOUNG GERMAN JAZZにカテゴライズされている作品のひとつ。ピアノがMICHAEL WOLLNY(1978年生まれ)、ウッドベースがEVA KRUSE(1978年、ハンブルグ生まれ)、ドラムスがERIC SCHAEFER(1976年生まれ)のトリオで、[em]というのがユニット名のようです。本作は[em]の2作目にあたります。この3人の演奏を聴くのは初めてと思っていましたら、MICHAEL WOLLNYは、ずっと前に入手していたドイツ人ドラマーKAI BUSSENIUSのリーダー作
■KAI BUSSENIUS TRIO / THIS TOWN (Mons Records MR 874371)
に参加しているピアニストだったのですね。これ↑はスタンダードを主としたストレートアヘッドな演奏で、どなたにも聴きやすい正統派ジャズ作品です。

さて、本作は2005年9月と2006年2月の録音。15曲全てがオリジナルで、MICHAEL WOLLNYが3曲、EVA RUSE が4曲、ERIC SCHAEFERが6曲、3人によるフリーインプロヴィゼーションによる演奏が2曲。
編成はアコースティックなピアノトリオですが、出てくる音は刺激と興奮に満ちて凄く面白いです。もちろんMICHAEL WOLLNYのピアノもKAI BUSSENIUS TRIOのときとはまるで別人のようなドライな感覚。アクロバティックでジグザグした演奏はスピードとエネルギーに満ちてエキサイティングでかっこいい。演奏はレベルも高く、現代感覚に溢れた緻密で複雑な楽曲をダイナミックに表現していて実に素晴らしいです。スローテンポな演奏においても、あえて美しいメロディを避けるかのようなシリアスに瞑想する雰囲気で、表現力の多彩さもハンパじゃないと感心しました。また、抽象表現も少なくありませんが無味乾燥ではなく、楽曲に起伏が多くメリハリが効いておりスリリングで聴き応え満点。アルバム一枚まるごと楽しめました。
ピアノのMICHAEL WOLLNYの演奏テクニックもさることながら、ドラムスのERIC SCHAEFERもなかなか凄いんじゃないでしょうか。また、ウッドベースのEVA KRUSEは女性だそうですが、全編を通じて演奏に軟弱さは微塵もありません。アルコ奏法も多用していますが確固たる技術に支えられたもので、ドスの効いた素晴らしい演奏を聴かせてくれます。このトリオは相性も抜群で、随所で息の合ったところを見せつけてくれます。
アルバムのラストでは、ついにMICHAEL WOLLNY君のタガが外れてますね(笑)まるで山下洋輔とJEAN-MICHEL PILCを足して2で割ったみたいなパフォーマンスには思わず吹き出してしまいました(笑)ピアノ線切れるんちゃうかと一瞬心配になりますが、もちろんメチャクチャをやっている訳ではありませんし、こんな凄いの、誰にでも演奏出来る訳ではありません。
聴き手を選びそうな内容ですが、私はこの作品とても面白いと思いました。
こちらのページで一部試聴も出来ます。
*今回は曲ごとの印象を書かなかったので、珍しく短い文章になりました。めでたい(笑)

■[em] WOLLNY, KRUSE, SCHAEFER / [em] II (ACT Music+Vision ACT 9655-2)
MICHAEL WOLLNY (p)
EVA KRUSE (b)
ERIC SCHAEFER (ds)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)