STEFANO BOLLANI / PIANO SOLO | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

STEFANO BOLLANI(1972年、イタリアのミラノ生まれ)は、私が今一番好きなピアニスト。リーダー作のLES FLEURS BLEUES(Label Bleu)で初めて演奏を聴いた時は「なんちゅう凄いピアニストや!」とびっくり。以来、参加作も含めていろいろ聴きましたが、まあ彼のピアノの歌うこと歌うこと!楽器でこれほど歌える人を私は知りません。それにあの独特のユーモアとやんちゃぶり♪(←しぶちゃさん曰く「いたずらっ子のおもちゃ箱をひっくり返したよう」は言いえて妙) かと思えば、Stunt Recordsレーベルの作品では美意識が横溢し深く静かに心に染み込んでくるような端正な演奏の数々で私をうっとりとさせてくれました。
研ぎ澄まされた演奏技術と卓越した作曲能力はもちろん、十指フル稼動の重厚なピアノパフォーマンスといい、アイディアの詰まった引き出しの多さといい、表現力の豊かさといい、センスの良さといい...この人の素晴らしさを挙げると本当にきりがありません。BOLLANIであれば、ジャズのみならず、クラシックや現代音楽からポピュラー全般に至るまでどんな曲でも、難なくさらりと見事に弾いてのけそうな感じがします。これだけの才能があるのに加えて、彼の演奏には音楽するという喜びがにじみ出ており、いろんな意味で人間味というものが感じられる気がする。それだからこそ、私はSTEFANO BOLLANIが好きなのだと思います。

2004年12月、「杜のホールはしもと」で聴いたライヴ、ENRICO RAVA & STEFANO BOLLANIのデュオはもう最高!楽しかったー!なのに、500人は入れそうなホールにたった50人ほどの聴衆という勿体無さ。ENRICO RAVA & STEFANO BOLLANIのような素晴らしいジャズを聴きに来ないで、日本のジャズファンは一体どんなジャズを聴いているんだろう?と思ってしまいました。

さて、私は若葉マークがはずれたばかりのジャズファン(すずっくさん公認)ですので、ECMレーベルの作品をたくさん聴いてきたわけではありませんし、『ECMの真実』という本も読んだことがありませんし、レーベルオーナー兼プロデューサーのMANFRED EICHERについては、たまたま雑誌『エスクァイア』(2004年3月号)を読んで少しだけ知った程度。それでも、MANFRED EICHERの息がかかるとSTEFANO BOLLANIがどんな演奏を聴かせてくれるのか少々興味がありました。

本作は2005年8月録音、ECMレーベルから初めてリリースされたSTEFANO BOLLANIのリーダー作。部分的にオーヴァーダビングも用いた前ソロ作のSMAT SAMT(Label Bleu)とは違って本作は純粋なピアノソロ作品です。全16曲のうちSTEFANO BOLLANIのオリジナルは7曲(うち即興による演奏が4曲)。ほかにスタンダードナンバー、クラシック、古い映画の主題歌、タンゴの名曲、ラグタイムなど。
では、簡単に曲の印象を。
いや~、3曲目のIMPRO Ⅱを聴いて、ようやく安心した私です(笑)
一番のお気に入りは7曲目のIMPRO Ⅲ。可愛らしくて、ちょっぴり奇妙で、ユーモラスな雰囲気。大袈裟に言えば、何か見たこともないような不思議な生き物がちょこまか動き回っているのを、あっけにとられて眺めているような気分。イマジネーションとアイディアの豊かさを感じる1曲。
8曲目、アルゼンチンタンゴの名曲A MEDIA LUZは、タンゴ独特のリズムを強調せず、自らの心の赴くままに歌っています。この独特のタイム感と、ユーモアをちりばめた歌心が際立つパフォーマンスは、STEFANO BOLLANIならでは。やはり彼は、歌の国イタリアの人なのだなあとつくづく思います。
14曲目のMAPLE LEAF RAGは、SCOTT JOPLIN作曲のラグタイム。伝統的で懐古的で由緒正しい演奏スタイルに現代センスを加味したということなのかもしれませんが、このラグタイムは綺麗過ぎるので、はっきり申し上げて私には物足りません。まだのかたは、LES FLEURS BLEUES(Label Bleu)の7曲目、BAR BITURICOをぜひ聴いてぶっ飛んでいただき、そして彼のユーモア精神に大いに笑っていただきたいと存じます<(_ _)>
15曲目のSARCASMIは、軽やかに歌うピアノに身を任せているだけで気持いい~。

予想はしていましたが、さすがにECM作品ともなると、やんちゃ魂は発揮されていないし、口笛は吹いていないし、感極まって発する溜息さえも聞えてきません。それは良いとしても、何かこうハッとするような、今のは一体何?と思わせるような驚きが無いという点に私としては少々物足りなさを感じるというのが正直なところです。個人的には、オリジナル曲と即興による演奏のIMPRO Ⅰ~Ⅳはいずれも気に入っています。全体に質の高いピアノソロ作品になっていますので、一度聴いて棚にしまっておくだけということにはならないと思います。これが私の愛聴盤になるかどうかは...まだ分かりません(;^_^A

STEFANO BOLLANIは現代ジャズシーンにおける逸材であり、天才に違いないと(私は勝手に)信じています。ECMのサイトによりますと、来日公演は今年10月31日から11月5日までの6日間。第2回ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2006(11月3日、4日)以外のスケジュールがまだ分かりませんし、私自身が行けるかどうかもまだ分かりませんが、これはぜひとも体験したいライヴです!
御用とお急ぎでないかたは、第2回ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2006のページへどうぞ。
こちらはボラちゃんのHP。
これによりますと、
11月3日は I Visionari で、
11月4日は Piano Solo + I Visionari となってますな!
ということは、ヤマハ銀座店でのショップライヴがピアノソロなのでしょうか???
これ以外のスケジュールも早く知りたい!

■STEFANO BOLLANI / PIANO SOLO (ECM Recoeds ECM 1964)
STEFANO BOLLANI (p)
入手先:HMV(通販)