ELISABETH KONTOMANOU / WAITIN' FOR SPRING | 晴れ時々ジャズ

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日々の雑感とともに、フランスを中心に最新の欧州ジャズについて書いています。

2005年録音、リリースのELISABETH KONTOMANOU(生年不詳、ギリシャ人の血を引くアフリカ系フランス人)の新作です。全11曲のうち6曲がスタンダードナンバーで、ELISABETH KONTOMANOU作曲が2曲。ピアニストのLAURENT COQ作曲が1曲などとなっており、曲によって楽器の編成が変わります。
前作MIDNIGHT SUN(Nocturne)は、特にDON'T EXPLAINなどを聴きますと、フェイクというにはあまりにも原曲の面影を残さない異様ともいえる歌いまわしにちょっとびっくり。ユニークなヴォーカルといい、JEAN-MICHEL PILCのけったいでヘンテコリンなピアノといい凄く面白いのですが、フリージャズ的で聴く人を選びそうな感じでした。ああいった少々アヴァンギャルドな器楽的唱法は彼女の得意とするところのようですが、本作は前作のような異様さはなくて素直なアプローチで歌っており、随分聴きやすくなっています。いやいや、聴きやすいどころか、正統派としても実に素晴らしい一級のジャズヴォーカル作品なのではないでしょうか。

それから本作で注目なのは、ジャズギタリストのJOHN SCOFIELDが参加(4曲)していること。この人のギタープレイはフィーリングが素晴らしいですね!こんなに凄いプレイヤーだとは知りませんでした。私はこれまで彼の演奏を聴いたことがない(と思う)ので、「君ぃ、ジョンスコを知らんでジャズのブログを書いたらあかんよ。」と指摘されても「はい、すんません<(_ _)>」としか答えようがないのですが、今度ぜひ彼のリーダー作を聴いてみようと思っています(あの~、どなたか、お薦め作品を教えてくださいませ)。

以下、お気に入りの曲について簡単に書きましょう。
もう1曲目のSUNNYから、ELISABETH KONTOMANOUの堂々とした歌いっぷりに引き込まれてしまいます。彼女の立派なボディから発せられるよく響く太い声は、いかにも丹田を意識して腹の底から出しているという感じ。ちょっぴりハスキーで姉御的な声質は、いわゆる美声ではないかもしれませんが、彼女のダイナミックでソウルフルな歌唱は素晴らしいですよ。
もう一つ、私の耳を奪ったのがJOHN SCOFIELDのギター。この人、バッキングの和音の選び方がセンス抜群。そしてそして、ギターソロも素晴らしいじゃありませんか!この曲はギター、ベース、ドラムスという編成ですが、もう、ヴォーカルとギターだけを追っている状態で「ええわ~♪」と、うっとりしている私なのでした。
2曲目、WAITIN' FOR SPRINGはギター、ソプラノサックス、ベース、ドラムスという編成ですが、ここでもやはり、ついついJOHN SCOFIELDのギターにのめり込んでしまう。彼のギターをずーっと追ってゆくと、バッキングにしろ、ソロにしろ、高度で複雑で独創的で、ソロときたらまるで二人で弾いているように聴こえて凄く面白い!曲はELISABETH KONTOMANOUの作詞作曲ですが、とてもよく書けていると思います。彼女のヒューマニズム溢れる歌声も素晴らしいのひとこと。
4曲目のTHE GOOD LIFEはLAURENT COQのピアノとのデュオ。抑制の効いたピアノとダイナミックなヴォーカルに聴き惚れましょう。
6曲目、CHARLES MINGUS作曲のDUKE ELLINGTON SOUND OF LOVEはベースとのデュオ。この曲は彼女が歌うのにぴったりで、独特の変わったメロディラインは彼女の歌いまわしにも共通する面白さがあります。後半のフェイクがまた素晴らしいですね。この曲でベースとヴォーカルのデュオというのは特に難しいと思うのですが、DARYL HALLのベースは安定していてなかなかに聴き応えがあります。
ラストのWE'LL BE TOGETHER AGAINはギターとのデュオ。ゆったりとしたテンポでしみじみと歌っているのがいいです。JOHN SCOFIELDのギターはやはりユニークで面白いですね。
さて、ELISABETH KONTOMANOUは2006年度のLES VICTOIRES DE LA MUSIQUEのジャズ部門でL'ARTISTE DE JAZZ VOCAL FRANCAIS(ベストジャズヴォーカリスト)を受賞しています。また、このCDはLE MONDE DELA MUSIC誌のCHOC、TELERAMAでffff(フォルテ4つで最高なのかな?)、MUSTなど受賞しているらしく、シールドの上からいっぱいシールが貼ってあってジャケが見えないほどでした。今、フランスでもっとも注目されているジャズヴォーカリストがELISABETH KONTOMANOUなのかもしれませんね。

*どうでもいいオマケ
実を申しますと、本作に参加しているSAM NEWSOMEのソプラノサックス、私は凄く苦手です(-_-;) JEAN-MICHEL PILCのリーダー作にも参加していますが、なぜかちっとも好きになれないのですね。で、本作ではどうかと申しますと、やはり肌が合わないというかなんというか、ダメなものはダメですわ(T_T)

それから!
金髪碧眼の美形ジャズヴォーカルばかり聴いて喜んでいらっしゃるオジサマ、はい、アナタのことですよ。いかがでしょうか、たまにはこういった現在進行形のジャズヴォーカル作品をお聴きになっては?けっこう癒されますよん。

JOHN SCOFIELDのHP↓ありました。
      http://www.johnscofield.com/
うわっ!作品いっぱいあり過ぎてめまいが...(笑)いったいどれを聴けばええのやら(^▽^;)

■ELISABETH KONTOMANOU / WAITIN' FOR SPRING (Nocturne NTCD 385)
ELISABETH KONTOMANOU (vo)
LAURENT COQ (p)
DARYL HALL (b)
DONALD KONTOMANOU (ds)
SAM NEWSOME (ss)
JOHN SCOFIELD (el-g)
入手先:キャットフィッシュレコード(通販)