正義の医療 | 筋肉ドクターの気まぐれ日記

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Killing Timeに日記を書き候

「害になってないし、本人も満足してるしいいですやん」、時々医療をしている人から聞く発言だ。

 
そして、言外には自分も儲かってるしいいですやん、ってことでしょう。
 
でも、私はこれって詐欺だと思っちゃうんですよね。
 
患者本人は治りたい、良くしてもらえるはずだと頼って、お金を払って貴重な時間を使って来てくれているわけです。
 
しかも、その害になってないしという発言。
医学的に予後が一緒なら害がないってことになる。
たとえ侵襲的に皮膚をメスで切って縫っても、傷跡は多少残っても、機能的に問題がなければ害がないという判断を医療はする。
慰安行為が本当に治癒を促進しているのか。逆に依存させて治癒を遅らせているのではないかという論文もある。
本当に害がないと断言できるのだろうか?
 
本人が満足しているから良いことをしている、しかも自分も儲かって一石二鳥、こういう考え方を私は麻薬の売人思考と呼んでいる。
本人が欲しがるものが、本人に良いものとは限らない。
個人の自由だという意見もあるだろうけど、私はこれに加担することに正義を感じない。
 
本当にその人のためになるものをやって、その人が喜ぼうが喜ばなかろうが、その人の人生の質が上がることをお手伝いする。
これこそ、本当の仕事ってもんだと思う。
 
得てしてこういった医療者本人が無知だったりする。喜んでいるから良いことしているに決まってる的な考えを盲信している。
なので、自分も同じ状態になったら、患者にしたことと同じことをする。
ある意味、自分が正しいと思っている医療を行っているわけだ。
私もできるだけこういった無知な信念で治療をしないようにしたいと思っている。
 
こんなことを考えながら行き着いた結論だと思って、キストレを患者さんに指導する毎日です。
本当にその人の運動器のためになっていることって、これくらいしか無いんじゃないかと思っている。
 
何も考えず他の医者がやっているから、上の先生に習ったからと、それをやって儲けて経済的に満たされた生活を送るというキャラになれなかった自分が、残念でもあり嬉しくもあり。