引張強さは軟鋼に比べ約2倍の約550MPaを示します。また弾性材料でもあり、降伏強さは400MPa以上
制振機能としての特徴は微振動(20μ前後の変位)を吸収する世界初の制振合金(特許取得済)
別の目的と言うのはこれです。
エンドピンと言うのは素材によって音響特性が変わると言うのは近年周知されて来ましたが、残念ながらこれを楽器に取り付ける構造に関してはあまり注目されていません。
一般的なネジで片側から押し付ける方法で固定するソケットではエンドピンへの振動も100%伝わらない為、性能が充分発揮出来ませんが、このソケットの構造であれば、楽器の中心にしっかり固定される為、楽器の振動もほぼ100%に近い状態で伝わります。
エンドピンの音響特性と言うのは、この楽器の振動に対して、素材の音響インピーダンスを変える事によって反射や共振などを発生させて楽器の振動の特定の帯域を増幅させる様な働きによる物だと私は考えています。
これに関しては今回は話題の中心ではありませんが、このコレットチャックを交換する事で10mmや8mm等、直径の異なるエンドピンが利用できると言うのもポイントでした。
但し、このインナーコレットホルダーを作られているメーカーで購入すると7,000円以上と非常に高価です。
実はこれは一般で市販されているERコレットと言う物が利用できますし、1/10程度の価格で手に入ります。
但し、Amazonや楽天で出品しているUXCELLはコロナの影響かもしれませんが納期が2ヶ月くらい掛かる為、今回は諦めて、モノタロウで手に入れました。
モノタロウだと2日位ですが、3,000円〜4,000円で、UXCELLより高価でも、上記で買う半分程度です。
基本的にはER20コレットの10mmや8mmが使えます。
届いた物を比べてみましたが、長さ方向が0.3mm程長い様ですが、大勢に影響しません。
実は、今回、これまで使っていた10mmと8mmを2個購入しました。
目的の一つは、チェロで使っていたシングルアイ(上の自分の記事で紹介しています)を固定している10mmやコントラバスで使っている10mmが摩耗してエンドピンが滑る様になって来た為、交換する為と、今回、購入したアルフェのエンドピンが8mmであった為です。
これは10mmですが、左が新しく購入した物、右がこれまで使っていた物ですが明らかに摩耗しています。
この部品も消耗品なんですね。
これまで使っていたシングルアイは10mmのステンレス製なので重さもしっかりあります。
一方で、アルフェの方は8mmで、アルミを混ぜてある為比重も通常の鉄よりやや軽く、約半分の重さです。
2本を比べてみてもかなり太さが違います。
ちなみに、インナーコレットホルダーの外側の真鍮カキャップの部分は2種類あり、小さいのがチェロ用、大きいのがコントラバス用ですが、硬いエンドピンの場合、チェロ用ではトルクが足りないので、直径の大きなコントラバス用を装着して締め付けトルクを増やしていましたが、これもかなり重さが異なり、コントラバス用はチェロ用の2倍以上あります。
チェロ用
コントラバス用
直径がこれだけ異なり、肉厚が違うので重さも異なります。
全てを並べてみました。
アルフェのエンドピンは焼入れした様な濃いブラウンなので中々綺麗です。
結論から言うと最近の悩みが解消しました。
最近のエンドピンと言うのは、車で例えればターボチャージャーの様な物で、楽器の音をブーストして音量や響きを増やしたり音色を変える働きがあり、それはそれで良いと思いますし、楽器によっては非常に効果的だと思います。
シングルアイの場合だと音量がパワーアプして低音もブーストされて音色も明るくなり、レーシングカー並に300kmくらい出そうな勢いです。
但し、これがレースカー同様に扱うのが難しい。
オーケストラの様なガンガンバリバリと言う様なシーンでれば、問題無いのですが、多少しっとり聴かせたい様なソロ等の場合、ppのコントロールや音色を変えるのが難しく、移弦等が忙しい場合、コントロールが上手く行かない場合は雑音が出やすいと言う難点がありました。
今回のアルフェと言うのは、現代のエンドピンの方向性とは全く反対の思想によるエンドピンで、楽器から下に関しては一切音を伝えない。と言うコンセプトで作られています。
正にスピーカーのインシュレーターと同じ発想で、スピーカー本来の振動を一切外部へ漏らさない事で100%スピーカーを働かせる。と言う事ですが、これを楽器にも当てはめたものです。
正直、半信半疑でしたが、それならできるだけエンドピンの要素が影響しない方が良いだろうと細い8mmを選択して(アルフェの場合、9.8mmと言うのもあるのですが、太い方は選択しませんでした)、キャップもチェロ用の小さい物を使いました。
エンドピンが細くなれば締め付けトルクもそれ程大きくなくとも良く、全体的に軽くなり重さの影響を出来るだけ少なくしました。
予想通り、エンドピンによるブースト機能は無くなりましたが、楽器そのものは以前よりも良く響く様になったと思います。
これは音量的なものでは無く残響的なもので、特にppp等の音量が小さい場合の響きがとても良くなった気がしますし、音と音の繋がりが良くなり、雑味の少ない音になったと思います。
これは推測ですが、楽器の振動が外部に漏れず、全て楽器の中で反射される為ではないでしょうか。
頑張ってビブラートを掛けなくとも楽器の自然な響きに頼れる感じがしますし、従来のエンドピンであれば、pp等の一定以下の振動はエンドピンで吸収されてしまい、一定の音量以上から響きが増幅されるので小さな音が出し難かったのかもしれません。
エンドピンの影響が全く無い為、楽器本来の響きが忠実に再現され、エンドピンの特製による、悪く言えば邪魔が無くなった為、右手のコントロールがしやすくなった気がします。
この他、エンドピンによる残響が無くなった為、楽器の反応が良くなり、音が締まった印象ですね。
低音のブースト感は無くなりましたが、右手がとても軽くなりましたし、全般的に音のクオリティが向上した印象です。
恐らく、これは楽器のクオリティが高ければ高い程効果があるのでは無いかと思います。
正直、使ってみるまでは「そんな事は無いだろう」と思ってましたが、要するにエンドピンが無いバロックスタイルと同じ状態で、何度かバロックスタイルで弾いているチェロを聴いて「良く楽器が鳴るなぁ」と思っていたのですが、それと同じ事なのかもしれません。
昔、ウィスキーのCMで「何も足さない。「何も引かない」と言う言葉がありましたが、正にそれですね。
このエンドピンは、オーケストラと言うよりもソロや室内楽の様な微妙な表現等が可能になる、どちらかと言うと上級者向けのエンドピンかもしれませんね。
実は、シングルアイは自分の師匠に紹介して、お試しもされた様ですが、最終的に音色の点で気に入られなかった様で、師匠の場合はオーケストラの首席を下りられてソロや室内楽中心で活動されていらっしゃるので合点が行きました。
8mmに関しては初めて使うのですが、10mmと比べると細い為、楽器が揺れやすい気がしますが、これは慣れる様な気がします。
ちなみに、シングルアイの方は同様にインナーコレットホルダーを装着しているコントラバスで使いたいと思ってます。
やはり、このターボチャージャーの様なエンドピンは箱の大きなコントラバスの方がより効果がある様な気がしますし、実は、今回10mmのコレットを買ったのも、上手く行けばシングルアイをコントラバスで使う為で、最初に写真で紹介した摩耗したコレットもコントラバスで使っていた物です。