H君は中学時代の同級生なのだが、縁あって今年の1月にあった僕が所属していたオーケストラのニューイヤーコンサートをわざわざ大阪から聴きに来てくれて、非常に久しぶりに会うことがあり、その際に、手土産としてくれたのがこれだった。
立派なブックカーバが掛けられた書籍で、中には恐らく誰しも知ってあるだろう筒井康隆氏のサイン入りの著書が入っていた。
今は音楽三昧の生活をしていて書籍などは殆ど縁が無くなったが、中学の頃は一端の文学少年(中学生だから少年と言っても良いだろう)気取りで、友達と競って短編小説何ぞも書いていた。
但し、正確には、夢中になっていたのは当時「文学」とは言えないものばかりで、自慢じゃないがいわゆる純文学等の類は殆ど読んだことが無く、この時期に読むべきであろう名作と呼ばれる小説には一切見向きもせずに、推理小説やSF小説の類を読み漁っていた。
特に好きだったのは日本のSF(と言えない人も居るが)作家の小説で、始まりは小学生の頃に読み始めた「星新一」だったが、その後、中学で、小松左京、筒井康隆等と言うSF作家達の新作を挙って読んでいた。
ちなみに、僕らの少年時代は漫画の世界でも手塚治虫、石森章太郎、桑田次郎などSF漫画花盛りの時代でもあり、その影響も当然あった。
彼にはその頃の僕の印象がそのままだった様で、手土産は迷わずこれと思った様だ。
もちろん、こんな代物は誰でも手に入るものでは無く、彼がそれなりの業界でそれなりの立場だから入手出来たのだが、その後、9月に再び会って飲んだ時に、又持って来てくれたのがこれだった。
彼が言うには、恐らく今世紀中に行われるであろう最初で最後の日本SF展で、10代の頃に寝る間も惜しんで読み漁った作家達の展覧会なら機会があったら行きたいと思っていた。
ちなみに、その後、再びこれを送って貰い久しぶりに筒井康隆の世界に触れた懐かしさと、偶然、これをやっている期間中に東京方面への出張が久しぶりに決まって、スケジュールを調整して前日に入って、世田谷まで出掛けて行った。
実は、意気揚々と出掛けたのだが、こう言う場所には「休館日」と言うものがあることを全く考えて無く、まんまとこの休館日に出かけてしまった(笑)
非常に残念だったが、その日は仕方なく街の方へ戻って両国の大江戸博物館へ行ったがその話は又後日として、やはり彼の「今世紀最後」と言うのが引っ掛かり、翌日は午後からの打ち合わせだったが、ホテルを早めに出て10時に入れる様に出掛けて何とか見ることが出来た。
京王線芦花公園駅と言う郊外の駅を降りて、出張用のキャリーをゴロゴロ引いて暫く歩くと誰かの旧宅だろうと思われる立派な屋敷の傍らに世田谷文学館はひっそりと建っていた。
建物の中は非常に近代的、平日の午前中の朝一番を少し過ぎた時間だったが既に何人かが入っていた。
当然、写真撮影は出来ないのだが、唯一記念写真様に用意されていたのがこのスペース

※撮影許可を貰って撮影しているブログがこちらにあるので雰囲気はこれを見て欲しい。
我々の世代というのは白黒テレビで、鉄腕アトムや初代のウルトラマンを見て映画館の大スクリーンでゴジラやガメラが街を破壊するのを楽しんで来た世代であるので、展示物の一つ一つが鮮明に記憶あるものばかりだったが、個人的に一番楽しめたのは黎明期の日本SF作家クラブの会報だ。
良く読んでみると非常にふざけた事を如何にも真面目に書いていたり(筒井さん貴方の事です)、当時、如何に遊び半分、いや殆ど遊び?で活動していたのが良く分かる会報で、あの頃憧れていた「大人」の世界を見ることができたのは非常に嬉しかった。
既に、この展覧会の重要な土産はH君から貰っていたので、家用にこれを購入した。

2時間程掛けて、展示部を舐めるように読んで(まさに読むと言う状態)、文学館を出る頃は昼近かったので、駅馬のそば屋へ入った。
少々、贅沢に天ぷらも頼んでみたが、蕎麦屋の天ぷらと言うのはカラッと揚がっていて実に美味い。
実は天ぷら蕎麦と言うのはあまり好きではないので、ここでも別に頼んだのだが、東京で食べる天ぷら蕎麦は美味いと言うのに気が付いた。
それはやはり濃い味だからだ。
天つゆに漬けるのと差がないくらいの蕎麦つゆなので、一緒に食べる天ぷらが実に美味い。
こちらで食べる薄味の蕎麦では天ぷらが勝ってしまうので、蕎麦を食ってるのか天ぷらを食ってるのか良く分からないのだが、東京の天ぷら蕎麦は非常に両方のバランスが良い。
スケジュールが厳しい中で、無理やり時間を作って2度も世田谷まで脚を運んだが、良い時間だった。
忙しかった為、書きかけのまま放置していたが、続きを書いているとH君からこの筒井さんの新作が届いたので紹介しておく。
~御礼代わりこの記事をH君へ捧げます。