☆人物紹介はこちらから→★
【前回まではこちら】
神々に愛されし地『エオルゼア』に君臨した帝国ガレマールと、小国ラヴィリティアの旧ラヴィリティア史上“最後の戦い”はとある三国の同盟国『エオルゼア同盟』の力によって終結を見せた。森の都『グリダニア』、水の都『リムサ・ロミンサ』、砂の都『ウルダハ』は帝国と小国の争いの裏で、とある計画を進めていた。ラヴィリティア国の功績により、三国の計画もつつがなく遂行され達成される。『エオルゼア同盟』は見事、帝国の動きを封じてラヴィリティア国ともに三国は事実上の勝利を収めたのだった。帝国に幽閉されたラヴィリティア国の王女ハンナ・ラヴィリティアはこの戦いの際、砂の都の最西端に位置する『ベスパーベイ』と言う小さな港の先にある帝国基地に身柄を移されていた。その場所を同盟軍が抑え込んだのは正に奇跡だったと言える。しかし『エオルゼア同盟』の計らいで王女である彼女が無事に帰国の途に着いた折、城では戦火の爪痕がまだラヴィリティアの大地で生きる者達を蝕んでいたのだった。戦で痛手を負った回復士(ヒーラー)クゥクゥ・マリアージュを連れてラヴィリティア国に急ぎ辿り着いたのは、冒険者仲間の錬金術師クイーンマリー・プリスティニーと言う女性だった。通称マリーはラヴィリティアの城下町でクゥの一時保護を直談判していた
「だから!この子だけでも、クゥクゥだけでも城に置いてって言ってるのよ!ラヴィリティア国のあんた達の王子様の為に戦ったヒーラーが負傷してるのよ、それでも“憂う国”の兵士なの!?」
「しかし…」
「良い、その者を城の中へ通せ」
「貴方は確か…」
「!! ハーロック卿!?か、畏まりました!!」
ラヴィリティア城下で門番の兵士と諍っていた錬金術師のマリーをラヴィリティア城に招き入れてくれたのは、この国の最高指導者であり三大貴族の一人『ハーロック卿』だった。錬金術師のマリーはクゥクゥを大事そうに抱き抱えて、先導するハーロック卿の後を追った。城内の中枢である『玉座の謁見広間』では王の代理を務める王女ハンナ・ラヴィリティアが、ガレマール帝国から人質解放されて息つく間も無く玉座に座っていた。その王女に錬金術師の彼女は膝を着いて嘆願した
「何卒、急を要する為に王女殿下へのご挨拶を省かせて頂きます。彼女が、クゥクゥ・マリアージュがオーク王太子殿下の御子を身籠っております」
「!! それは本当か、冒険者殿?」
老齢のハーロック卿でさえ予測出来なかったその出来事に王女とハーロック卿は目を丸くした。ハンナ王女に問われた錬金術師マリーは口早にこう告げた
「はい。仮にオーク王太子殿下の御子では無かったとして、その可能性が否定し切れないこの状況。ラヴィリティア国が彼女、クゥクゥを捨て置くとはとても思えませんでした。もう間もなく、瀕死のオーク王太子殿下も城へ移送されます。どうかこの子だけでも先に受け入れて頂けませんか」
「いけない、直ぐ私の寝室へ彼女を運ぼう」
「なりません、ハンナ王女…!」
「全ての責は私が受けよう。いいですね、ハーロック卿?」
「仕方あるまい。この冒険者をハンナ王女の部屋へ連れて行け、丁重にな」
「…畏まりました、ハンナ王女、ハーロック卿」
やはりその場に居る誰もに得体のしれない冒険者へ不満がある。ハンナ王女やハーロック卿に付き従って居た侍従達の反応は、錬金術師マリーには芳しくないのが現実だった。ラヴィリティア国の総帥とも呼ばれるハーロック卿の一声で、未だ意識を混濁させるクゥクゥ・マリアージュは急遽ラヴィリティア国に受け入れてもらうのだった。
クゥクゥが城で匿われた直後、ラヴィリティア国の王太子でありクゥクゥが所属する冒険者クランBecome someone(ビカム・サムワン)の本当のリーダー、オーク・ラヴィリティアが城内へ運び込まれる。オークは直ぐさま宮廷医に診察されて、彼に纏わる事でハンナ王女以下ラヴィリティアの高官達がハーロック卿執務室へ集められていた。宮廷医がその場に居る人間全員に瀕死の彼の体調を報告した
「現在オーク王太子殿下の御身は生命を維持しているのがやっとで非常に危険な状況です。そして無くなった腕や足が元に戻る事は今後あり得ないでしょう」
「…」
オークの仮初の婚約者でもあるハンナ王女は眉間を寄せて涙ぐみ固く目を閉じた。深く息を吐いた総帥ハーロック卿も、運び込まれたオークの状態を確認していた。とても以前の様な状態には戻らないだろうと腹を決めていたものの、心の内は酷い現実に打ちのめされていた。宮廷医は話を続ける、
「もう一つ、深刻な問題があります。オーク王太子殿下の左足は、右腕の状態よりも損傷が激しい。…っ、」
「? どうした?話を続けてくれ」
「…ハンナ王女、オーク様の左足は足の付け根から損傷しており睾丸が、ほぼ欠損しております…つまり、これより先は御子を成すことは不可能に近い、でしょう」
「なんと…」
「! では、まさか…っ」
「はい、ハンナ王女。先程ほぼ同時に担ぎ込まれてきた女性がもし、本当にオーク様の御子だとしたら…」
「現ラヴィリティア王太子の、唯一の跡継ぎか…!?」
立ち会っていたラヴィリティアの官僚の一人が最後にその言葉を口にした時、その場に居る全員が目を見開き息を飲んだ。ハンナ王女もハーロック卿でさえも驚きが隠せない。長い沈黙の後、ハーロック卿がやっとの思いで口を開いた
「…これで全員異論は無いな。彼女を、あのヒーラーの娘をこのラヴィリティア城に留め置く。万が一が遭ってはならないからな」
「…ハーロック卿の仰せのままに。」
「…っ」
他の者はわからない、世継ぎの心配だけが過った者も多いだろう。だがその場に立ち尽くしたハンナ王女だけが純粋に、自分の可愛い弟のようなオークに想いを馳せた。これが国の為に死力を尽くした者の、悲劇の王太子の末路なのか。誰もが何もかも信じられず解らないまま、本当は有った筈の国と人の未来を憂う他無かったのであった。
「マリー殿、お願いです。どうか少しだけでも休まれて下さい」
「…スレイダー、もう少しだけ。もう少しだけクゥの治療をさせて」
「マリー殿…」
クゥクゥをやっとの思いでラヴィリティア城に運び込んだ錬金術師マリーは、ラヴィリティアに到着したその日からほぼ不眠不休でクゥクゥへ回復魔法を施していた。だが、マリーのその一心不乱の様子を見咎めたのは、後から駆け付けてくれた初老を過ぎた男性スレイダー・オキュベルト。彼はクゥクゥ達冒険者クランのお抱え裁縫師だ。スレイダーがマリーに声をかけ続ける
「今夜はもうこれ以上はいけません、マリー殿。今度は貴女が倒れてしまう。それに彼らが目を覚ました時に貴女が居なくてどうします?」
「でも…!…今、オーク達の容態はどうなってるの?スレイダー」
「はい、マリー殿。オーク殿を連れ戻してくれたオウ殿、ルフナ殿もこの城に受け入れて貰えました。彼らはラヴィリティアの英雄ですからね、揉める事なく登城する事が出来ました。ですが…オーク殿と同じ瀕死の状態で、目覚める兆候が一切ありません」
「二人共、オーク程では無いにせよ傷がかなり深かったものね…。『天使の谷』へケイを連れて行ったオクベルの消息は?」
「『天使の谷』がある水の都『リムサ・ロミンサ』盟主メルウィブ提督がラヴィリティア兵の力を借りて、懸命にオクベル殿を探してくれています。ケイ殿とオクベル殿を運んでくれたウォルステッド殿が証言してくれていますが、本当に『天使の谷』へ辿り着いたかは確証が無い、と申しております…マリー殿」
「…スレイダー、こんな事…本当に言いたくないけれどオクベルとケイの遺体が確認されて無いなら希望を持ちましょう。あの子達なら大丈夫、きっと、天使の谷へ辿り着いているわ」
「はい、同感ですマリー殿」
錬金術師マリーと裁縫師スレイダーふたりは引き裂かれそうな胸の痛みを抱えながら、自分を鼓舞するように言葉を交わし合った。その時、クゥからほんの少し目を反らしていたマリーが彼女を二度見した。度重なる心労と妊娠で意識を虚ろにしていたクゥが二,三日ぶりに目を覚ましたのだ。掠れた声でクゥがマリーの名を呼ぶ
「…マリー、」
「クゥっ!?わかるっ?私よ、マリーよ!安心して、ここはラヴィリティア城よ。もう大丈夫、お腹の子も無事だから心配しないで」
「…マリー、皆は?オークは無事なの…?マリー、」
「…っ、全員無事よ、誰一人欠けていないわ」
「良かった…っ」
「マリー殿、クゥ殿はまた眠ったようです。よく、頑張りましたね」
「スレイダー…っ!」

クゥの為とはいえ大切な仲間に嘘を付いてしまったマリーは、自身の肩に手を置いて慰めてくれた裁縫師スレイダーの手を強く握って嗚咽を漏らした。彼女の精神もまた限界だった。国と国との戦争は人の心を深く深く傷つける。目の前で傷つき果てた仲間達を本当の意味でどうにかしてあげられる力は人類には無い。寄り添う事は出来てもその無力な現実に立ち向かう事は、冒険者にも難しくまた医術に長けた女にも、待つことしか許されない男にも抗う術を見出させなかったのだったー。
(次回に続く)
↓読者登録をすれば更新されたら続きが読める!
ぽちっとクリックしてね♪
↓他の旅ブログを見る↓
☆X(※旧ツイッター)

☆インスタグラム
☆ブログランキングに参加中!↓↓




