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【前回まではこちら】
小国『ラヴィリティア』に永遠の幸せをもたらす事になる天使ケイ・ベルガモットと、真のラヴィリティアの血統オーク・ラヴィリティアの元へ戻ってきた戦友オクーベル・エド。彼らは自分達の冒険者仲間から『ガレマール戦争』終戦後の話を聞かされる。三年前のその日、王家の王太子であったオークの窮地を知らされて参戦したのは戦闘集団と言われたある零式部隊。彼らを率いた巉巌(ざんがん)のローラと呼ばれる男はオークが国へ戻った後、何事も無かったように自分達の拠点へ帰って行った。そしてラヴィリティア国から後に褒章の報せを受けるもただ静かに沈黙した。それはその褒章を受け取ってしまうと独立を貫いている零式部隊がひとつの国家に与する事を意味してしまうからだ。頑なに褒章を受け取ろうとしなかった本当の理由はきっと違うのだろう、ローラはオークの事を友人だと感じていた。だから当然の事をしたまでと思っていたはずだ。国の宰相となったオークは、その意向に沿うように彼らとの関係を一度絶つ事になる。秘密裏に幾度かローラと手紙を交わしたオークの記録。それはラヴィリティア国が何十年と月日を重ねて代替わりした歴史書の、そのさらに末尾へ移り変わった後ひっそりと刻まれた。ローラ達もまたラヴィリティア国の名もない英雄であった。
また先の戦で記憶を失った天使ケイは新ラヴィリティア史の中の十年余りで、ラヴィリティア弓術士隊の隊長にのし上がる。戦の功績と天武の才が認められて新女王ハンナ・ラヴィリティアにその位を与えられた。性格は違えど仲間の宰相オークやオークの近衛兵であり内縁の妻クゥクゥ・マリアージュと共にあり続けてラヴィリティア城で暮らした。それが新しい彼の在り方であった。天使ケイと共にオークを戦地から連れ帰った斧術士(ふじゅつし)の獣人オウ・クベルニルは、国の褒章で自身の銅像をラヴィリティア国内に望んだ。銅像の台座には獣人の一族の名も一緒に刻まれる事になって彼の悲願はついに叶う。ラヴィリティアがその歴史に幕を閉じても、その銅像は末永く大地にそびえ立った。天使ケイと同様に彼もラヴィリティアに仕える将軍のひとりになったのだった。しかしラヴィリティアに戻った女冒険者オクーベル、彼女だけは、国内の全ての出来事に片が付いたのちラヴィリティア城を後にした。彼女は国家にも何ものにも縛られず、ひとかどの冒険者である事を願った。天使の谷へ行って天使になったからかは誰にもわからない。彼女はオークの冒険者クラン『Become someone(ビカム・サムワン)』解散後にその人生を選んだ。それでも彼女は冒険者依頼をこなしてはラヴィリティア城を度々訪れる。王家に忠誠を誓った自身の恋人アールグレイの元へ必ず戻った。時折、ラヴィリティアの歴史に暗い影を落とす他国との争いの折には必ず馳せ参じた。そしてオクーベルの冒険者としての拠点は以前と変わらず、クラン『ビカム・サムワン』のあった森の都グリダニア・ラベンダーベッドの家。そこは主なきあと王太子であったオークが冒険者時代に籍席を置いていたとされたため姿を残された。その管理を任されたのは同じ時代に籍を置いていたクランお抱え裁縫師スレイダー・オキュベルト。彼はその長い生涯をこの場所で終える。彼の愛用していた手帳には実に満足のいく人生だった、という旧友宛の手紙が挟まっていた。生前のスレイダーをよく手伝い、ラヴィリティア専属錬金術士になったクイーンマリー・プリスティニーは晩年、彼の役目を引き継いでラベンダーの家を管理した。彼女もまたこの家を愛し続けた思慮深い女冒険者だった。
ラヴィリティア国が年号を変えて十年余り。隣国の森の都『グリダニア』木工師ギルド横の公園で、地元の子供達がピュー、ピューと笛を鳴らして遊んでいた
「ねぇまだ直らない?耳のお兄さん」
「ちょっと待てって、もうすぐだから…ほら取れた!持ってけ。父ちゃんに似て、お願いの仕方が上手くなったな」
「ありがとう、“お兄さん”」
中の仕掛けが詰まってしまった笛を直してもらい、それを受け取ったひとりの少女。彼女は薄紅色を滲ませる錦糸の髪を褐色の肌の頬へ揺らしながら走り去って行った。彼女が“耳のお兄さん”と持ち上げて呼んだのは敬称から少し歳を重ねた男性ルフナ・ククだ。彼は今日少女の子守をしていた。彼は昨年まで技術を追い求めて、とある人物へと弟子入りをしていた。それは戦で手足を失った親友であるオーク・ラヴィリティアの義手を作る為だった。義手作りの師匠から免許皆伝を授けられたこの日、古巣の木工師ギルドへの帰還を同時に果たしていた。その足で少女を預かりグリダニアへ連れてきた。彼女は冒険者クラン元リーダーとその妻の娘だ。程なく他の仲間達も到着する。今年は数年に一度の、仲間との至福の再会だ。冒険者の最速の運び屋に連れられた、四人の仲間は遠くの方からルフナ達へ手を振る。ルフナと少女は手を繋いで彼らと一緒にある場所へ向かうために公園を後にした。
同時刻、森の都グリダニアとラヴィリティア国の国境を見渡せる丘に、オーク・ラヴィリティアと妻であるクゥクゥ・マリアージュは共に立っていた
この場所は旧ラヴィリティア史に名を残す英雄の、クゥクゥの父と伴侶の母の墓石がある地だ。丘の眼下に広がる広大な森林を眺めながらオークが先に口を開く
「クゥ、君のお父さんは生前、先々代ラヴィリティア王に手紙を送っている。“たとえ道を分かとうとも大地に立つ貴方と共に国を愛そう。果てしなく続く緑豊かな大地を耕し培って、新しい命を繋げていく”と」
「ええ、覚えてる、オーク。私も父さんと同じ気持ちよ。ラヴィリティアの大地に立つ貴方も、この国も一生愛してる」
「俺も同じ気持ちだよ。ああ、この国は本当に美しいな、なぁ、クゥ」
オークはガレマール戦争で沢山のものを無くしたが、引き換えに自身の妻クゥを取り戻す。彼はこの十年で多くの冒険者を国に根付かせてラヴィリティアの荒れた領地を蘇らせた。ガレマール戦争以前に起きた『カルテノーの戦い』で捨て置かれた大地に、冒険者の力を借りて土を耕し、誇り高き戦士達の墓を全て建ててやる事が出来た。彼の片目に映るラヴィリティアの大地は昔とその姿を大きく変えた。オークはこの光景を生涯忘れないと心の中で誓いながら、自身に寄り添う最愛の人へ最後に囁く
「君を永遠に愛しているよ。ありがとう、ここまで着いてきてくれて」
「ずっと傍にいるよ、これからも一緒に歩いて行こう?」
固く手を取り合おう、旅はここで終わりじゃない。“人生の旅”はまだまだ続く─。さあ、新しい地と物語へ歩を進めようじゃないか。
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