ラヴィリティアの大地第8話「初めての共闘」後編 | 『拝啓、夫が捕まりました。』でんどうし奮闘記

『拝啓、夫が捕まりました。』でんどうし奮闘記

鬱で元被害者の妻とつかまった夫の奮闘記。

【前回まではこちら】

 

※本日もスペシャルエディションです

 

 

 

回復士(ヒーラー)クゥクゥはガラの悪い男に襟首を掴まれる。それと同時に女冒険者オクーベルと貴族冒険者オークがクゥの元に駆け出した。男の左手がクゥの頬に当たりそうになったその時一、

 

ドスッ!!!

 

「!?」

 

鈍い音を立てて赤い鮮血が飛び散ったのはクゥではなく、クゥの頬を殴ろうとした男の左手だった。男の左手に弓矢が突き刺さったのである。敵も味方もその場に介した全員がその出来事をすぐには呑み込めずまた男の悲鳴も一拍遅れてからだった

 

「ぐあぁっっ…!!」

 

よろめく男。男の仲間の一人が左手に位置する呪術師ギルドの方向を指さしこう叫んだ

 

「あそこだっ!」

「嘘だろ…なんてところから打ちやがる、軽く200メートルぐらいあるぞ…」

 

通常弓矢の射程距離は100メートル程。冒険者のスキルを使えば200メートルぐらいは可能だが弓矢を放った冒険者

ケイ・ベルガモットはスキルなしでこのロングショットを決めたのだ。矢の突き刺さった男の右腕が、クゥの襟元を緩めた瞬間ー、

 

クゥは後ろから何か大きいものに抱きかかえられ、掴みかかった男が目の前で瞬く間に地面に吹き飛ぶのが目に入った。冒険者オークの右アッパーが男の顔面炸裂したのだ。殴られた男は仲間の男たちに支えられながら自身を吹き飛ばしたオークに叫んだ

 

「なんなんだ、てめぇは…!あとからきやがって…、もし」

 

 

すごまれたオークはひるまずクゥを自分の背に隠して男にこう告げた

 

「それはどうかな、俺にはー、

 

 

それはオークの明らかな宣戦布告だった。そしてそう告げた矢先、

 

「うわっ!」

 

ガラの悪い男たちの後方で仲間の男の人1人が悲鳴を上げた。2メートル以上はある大柄な獣人が男の1人詰め寄っていたのだ

 

「俺も後ろから見ていた、この男たちがそこの罪を擦り付けられた女性を取り囲んで街の門をくぐったところをな。罪のない人間に拳を奮うことが人の道理なのか?獣にも劣る行動だな、理解できん」

 

獣人、通称オウはオークを一度見やって、

 

「助太刀しよう」

 

オークはオウにしっかり頷いてみせた

 

始めに言いがかりをつけられていた女性を避難させたオークの左後ろ方向に控えた女冒険者オクーベルに男たちの1人が声を荒げた

 

「そこの帽子の女!おまえも関係ないだろ…!」

 

威嚇されたオクーベルは杖を構え直し男たちに笑ってみせた

 

その言葉を合図に両者戦闘態勢に入った。叫び声をあげるオウ

 

はじめに弓を射たケイも現場に到着した

 

 

オークはクゥに声をかけた

 

 

オークの発言はしっかりしたものだった。

 

 

戦闘は時間にしてわずか5分ー。

もともと町のごろつき程度など、街区外のモンスターを狩っている冒険者に敵うはずもなく男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。クイックサンドに普段の様相が戻ったところで大立ち回りをみせた冒険者たちは静けさを取り戻した

 

クゥは呆気をとられすぐには言葉が出てこない。自分がどうしたいのか、引き止めたいのか迷っている間に皆は離れていく

 

 

「まって…待って・・・っ」

 

クゥは意を決して大声で叫んだ

 

 

皆の歩みが止まった。オクーベルの承諾を皮切りにケイもそれに応えた。クゥは反応が薄いような獣人オウに期待の眼差しを向けた

 

 

残るはひとり。事の様子を見守っていたオークに、女冒険者オクーベルは話しかけた

 

 

オークは一瞬迷うそぶりをみせたがー、

 

 

内心、人としてあるべき行動をしただけ、と前置きしながらもクゥの申し出を快諾した

 

 

クゥは皆にお礼を伝えてからオークに向き直った

 

 

オークは安堵の表情を浮かべてクゥに力強く答えた

 

 

皆は後ろにある酒場クイックサンドに足を向けたのだったー。

 

(次回に続く)

 

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