4月、輝次先生はやってきた。
財務諸表を見てもらいながら、ざっくばらんに相談した。
国道が拡幅されるまで待てない状況である。
事業撤退も含めて診断してもらいたい。
輝次先生の答えはこれだ。
私は東京でたくさんの会社再建を手掛けてきた。
自己資本の充実作戦。
流動比率のアップ作戦。
などを通じて、国道の拡幅を利用してさらに自己資本を充実させよう。
というものであった。
そして銀行や信用保証協会が安心して資金を貸してくれる
貸借対照表を作る。というものであった。
自己資金充実作戦についてはまず、
お袋が各銀行に数千万円の定期預金を持っているが
認知症でまもなくおろせなくなるので自分の名前がかろうじて
書ける今、使用させてもらおう。
相続すべき弟たちは賛成してくれた。
大変見事な弟たちであった。
おふくろとおやじと各銀行を回ってサインしてもらった。
おやじは分かっていたが、おふくろは何も分からず
ありがとう、ありがとうと言っていた。
申し訳ない思いでいっぱいであった。
さらに輝次先生は個人の土地が会社に貸してあるが
これも自己資金の充実に使用するという
驚くべき考えであった。
この方法は東京ですでにやっていて、合法的なので
税務署からもどこからも文句は来ない。
ただ当社の税理士先生のみ反対するというものであった。
これは輝次先生が説得してくれるという。
いくら立派な貸借対照表を作っても営業段階の
損益計算書で赤字を出していてはならない。
誰かいい先生はいないのかい。と聞かれた。
次回に会っていただきましょう。となった。
この輝次先生が私にとって後半戦の人生の師の一人である。
2年後、
自己資本比率は18%が40%になった。
流動比率は75%で返済能力なし、だったものが230%になった。
もはや信用保証協会も何も言わないだろうが、
用事も今のところない。
述べてきたこと以外にもいろいろなことを指導いただいた。
弟に助けてもらった。
しかも指導料なしである。
お礼に850円の海鮮丼をごちそうしただけである。
この立派な先生は各地で人助けをしているので
お得意さんは増える一方で支店も増えて、とうとう200人規模の
大きな税理士事務所になった。
私の自慢の弟である。
コンパッソ税理士法人という。