お休みの日に、
ちょっとキッチンの棚を、
整理していました。
そうすると、
奥のほうから、
懐かしいものが出てきたりしますよね。
私の場合は、
一番上の棚のさらに奥から、
白いお皿が出てきました。
結婚した当初に、
いただいたものだったと思います。
きれいな模様が入っていて、
『ブランド食器』
という感じの上品なお皿です。
せっかくなので、
今日の夜ご飯に使ってみようかなと思いました。
こういうのって、
やっぱりワクワクしますよね。
いつものお惣菜(おそうざい)を乗せるだけでも、
なんだかお店のようになる気がして。
少しだけ生活に余裕ができたような、
そんな嬉しい気持ちになりました。
では、
いったい何が起きたのか。
実は、
ここからが大変だったのです。
お皿を取り出そうと、
手を伸ばしたその瞬間。
世界が、
ガラリと変わりました。
いや、
大げさではなく、
本当にそんな感じがしたのです。
お皿を重ねていた、
その下の部分が、
なんだか妙に引っかかりました。
すんなりと動かないのです。
あれっと思いました。
ここで、
普通なら一度手を止めて、
慎重に様子を見るはずです。
でも、
私はなぜか、
そのまま引っ張ってしまいました。
『力の法則』
というものがありますよね。
ようするに、
余計な力を加えたということです。
ガタッ。
嫌な音がしました。
それは、
ただの音ではありませんでした。
我が家の平和を揺るがす、
『破滅の音』
だったのです。
お皿の上のほうにあった小皿が、
まるで意思を持ったかのように、
ポーンと飛び出しました。
空中を優雅に舞う、
小さなお皿。
スローモーションのように、
その光景が見えました。
私の脳裏には、
走馬灯(そうまとう)のように、
これまでの思い出がよぎりました。
なんであんなお皿を出してしまったのか。
なぜ素直に、
いつも使っているプラスチックのタッパーで、
済ませなかったのか。
後悔というのは、
いつもこういう時にやってくるものなのですね。
ガシャーーーン。
盛大な音が、
キッチンに響き渡りました。
音を聞きつけて、
リビングから家族が走ってきました。
「お母さん、
いったい何があったの?」
心配そうな顔をして、
覗き込む子どもたち。
私は、
呆然と立ち尽くしていました。
足元には、
粉々に砕け散った、
かつては美しかったお皿たちの残骸が広がっていました。
これは、
単なる食器の破損ではありません。
私の心まで、
一緒に粉々になってしまったような、
そんな衝撃でした。
そう考えると、
人生って本当に何が起きるか分かりませんよね。
ただ、
お皿を一枚使いたかっただけなのです。
それなのに、
結果として、
大掃除の続きを夜の十時にやるはめになりました。
細かい破片がないか、
懐中電灯まで持ち出して、
床を這いつくばって探しました。
こういうのって、
思った以上に体力が削られます。
でも、
不思議なことに、
少し時間が経つと、
なんだか笑えてきたりもするのです。
あんなにきれいに割れなくてもいいのに。
人間、
あまりにも予想外のことが起きると、
笑うしかないんだなと思いました。
みなさんは、
こんな経験はないでしょうか。
ちょっとした思いつきで行動した結果、
大惨事になってしまったこと。
きっと私だけではないはずです。
翌日、
残ったお皿を洗いました。
今度は、
すごく慎重に扱いました。
まるで、
爆弾を処理するかのような手つきで。
でも、
そんなハプニングがあったからこそ、
普通に暮らしている毎日が、
どれだけ平和でありがたいかを感じることができました。
たまには、
こういう事件が起きるのも、
刺激になっていいのかもしれません。
いや、
やっぱりもう懲り懲りですけどね。
今度の休日は、
食器棚の奥を覗くのはやめておこうかなと思います。
おとなしく、
リビングでコーヒーでも飲んでいるのが、
一番平和で安全な過ごし方なのかもしれませんね。
そういえば、
コーヒーといえば、最近お気に入りの豆があるんです。
近所の、
少しだけレトロな雰囲気が漂う喫茶店で買っているものなのですが。
そこは、
マスターが一人で切り盛りしている小さなお店で、
扉を開けると、
いつも焙煎されたばかりの香ばしい匂いがふわっと漂ってくるのです。
こういうお店って、
入るだけで、
なんだか少し大人になったような気分になりませんか。
私の場合は、
そこで必ず、
一番深煎りの豆を挽いてもらいます。
酸味が少なくて、
どっしりとした苦みがあるタイプ。
それを、
お休みの日の朝に、
ゆっくりと時間をかけてドリップするのが、
最近の小さな楽しみになっています。
お湯を注ぐと、
コーヒーの粉がぽこぽこと膨らんで、
まるで生き物みたいに呼吸をするんです。
そういうのを見ているだけで、
心がすーっと落ち着いていくのが分かります。
忙しい平日は、
どうしてもインスタントのスティックコーヒーで済ませてしまいがちですが、
やっぱり、
ちゃんと豆から淹れたコーヒーは格別ですね。
一手間かけることの贅沢(ぜいたく)というか。
そういう時間を、
自分で作り出すことって、
とても大事なことなんだなと感じます。
でも、
そんなおうち時間も好きですが、
やっぱり、
たまには外の空気を感じに出かけたくなりますよね。
特に、
季節の変わり目なんかは、
どこか遠くへ行きたくなる衝動に駆られたりします。
この間は、
思い立って、
少し離れたところにある植物園に行ってきました。
電車を乗り継いで、
最寄り駅から少し歩いたところにある、
緑豊かな場所です。
入場券を買って、
一歩足を踏み入れると、
そこはもう別世界でした。
都会の喧騒(けんそう)が嘘のように、
鳥のさえずりと、
風で木々の葉がこすれ合う音だけが聞こえてくるのです。
こういう自然の中に身を置くと、
日々のちっぽけな悩みなんて、
なんだかどうでもよくなってきたりしますよね。
敷地内をゆっくりと散歩しながら、
いろんな種類の花を眺めました。
名前も知らないような珍しい花や、
子供の頃によく見かけた懐かしい草花まで、
本当にたくさんありました。
特に印象に残っているのが、
大きな温室です。
扉を開けた瞬間、
もわっとした熱気と、
ジャングルのような濃厚な湿気に包まれました。
眼鏡が一瞬で真っ白になって、
ちょっと焦りましたけどね。
でも、
その中に咲いていた、
鮮やかなピンク色の南国の花が、
とても綺麗だったんです。
葉っぱの形も面白くて、
じっと見ていると、
なんだか絵本の世界に迷い込んだような気分になりました。
こういう非日常の景色に出会えるから、
お出かけはやめられないんですよね。
たくさん歩いて、
少し足が疲れてきたころ、
園内のベンチでひと休みしました。
水筒に入れて持ってきたお茶を飲みながら、
青空を見上げました。
木漏れ日がきらきらと揺れていて、
風が心地よくて、
そのままうとうとと眠くなってしまいそうでした。
こういう穏やかな時間って、
本当に贅沢だなと思います。
普段は、
時間に追われるようにして生きているからこそ、
こうした何もしない時間が必要なのかもしれません。
みなさんは、
最近、
ゆっくり空を見上げたことはあるでしょうか。
忙しい毎日を送っていると、
どうしても視線が下を向きがちになってしまいますよね。
足元の石につまずかないように、
落とし物をしないように、
目の前のタスクをこなすように。
でも、
たまには、
わざと立ち止まって、
空を見上げてみるのもいいものですよ。
雲の形が変わっていくのを眺めているだけで、
心がふっと軽くなるような気がします。
そういえば、
植物園の帰りに、
近くのパン屋さんに寄ったんです。
これがまた、
すごく当たりのお店でした。
外観は、
ヨーロッパの田舎町にあるような、
こぢんまりとした可愛らしいお店で。
ガラスケースの中に並んでいるパンが、
どれもこれも美味しそうだったんです。
焼きたてのクロワッサンや、
季節のフルーツが乗ったデニッシュなどがあって、
どれにしようか本当に迷ってしまいました。
こういうときって、
大体買いすぎてしまうんですよね。
厳選したつもりなのに、
レジカゴに入れると、
いつの間にかすごい量になっていたりして。
でも、
家に帰ってからのお楽しみと思えば、
それもまた幸せな悩みです。
夕方、
家に戻ってきてから、
さっそく買ったばかりのパンをコーヒーと一緒にいただきました。
外はサクサク、
中はバターの香りがふわっと広がるクロワッサンは、
一口食べただけで、
歩き疲れた体が癒やされていくようでした。
やっぱり、
美味しいものを食べることって、
生きる上での大きな楽しみの一つですよね。
食べ終わったあと、
お腹いっぱいになって、
ソファーにゴロンと横になりました。
窓の外を見ると、
すっかり日も暮れていて、
夜の静かな時間が始まっていました。
あぁ、
今日もいい一日だったな、
そんなふうに心から思えた瞬間でした。
特別なイベントがあったわけでもなく、
ただ植物園に行って、
パンを買って帰ってきただけなのに。
それだけで、
こんなにも満たされた気持ちになれるなんて、
人間の心って、
案外単純で、
それでいて面白いものだなと思います。
きっと、
日々の生活の中に、
小さな楽しみを見つけるアンテナを、
自分の中に持っているかどうかなのかもしれません。
同じ景色を見ていても、
退屈だと感じるか、
面白いと感じるかは、
自分次第だったりするんですよね。
そう考えると、
これからの毎日も、
まだまだ捨てたもんじゃないなと思えてきます。
明日からはまた、
いつも通りの平日の朝がやってきます。
洗濯物を干して、
掃除機をかけて、
バタバタと仕事の準備をして。
きっと、
また慌ただしい一日が始まることでしょう。
でも、
心のどこかに、
あの植物園の緑や、
喫茶店のコーヒーの香りを覚えておけば、
多少の嫌なことがあっても、
乗り越えられるような気がするのです。
人間、
ときには息抜きも必要ですし、
自分を甘やかす時間も大切にしたいですよね。
さて、
そろそろ明日の準備をしようかなと思います。
みなさんも、
次の休日は、
近所の公園でも、
少し遠くの植物園でも、
どこか自分の好きな場所に出かけてみてはいかがでしょうか。
きっと、
新しい発見や、
心温まる瞬間が待っているはずです。
私は次に休みが取れたら、
今度は、
まだ行ったことのない海の方へ、
電車に揺られて出かけてみようかなと計画しています。
潮風を感じながら、
ぼんやりと波の音を聞くだけで、
また新しいエネルギーがチャージできそうな気がするから。
そんな小さな楽しみを胸に、
明日からもまた、
一歩一歩、
自分のペースで歩いていこうと思います。
そう考えると、
お出かけって、
なんだか人生の小さなおまけみたいなものなのかもしれません。
なくても生きていけるけれど、
あると少しだけ毎日が色鮮やかになる。
そんなふうに思えるんです。
こういうのって、
やっぱりいいですよね。
みなさんは、
最近どんなお出かけをしましたか。
あるいは、
これから行ってみたい場所はありますか。
計画を立てているときのワクワク感も、
実際に現地を歩いているときの高揚感も、
帰ってきてから写真を眺める時間も、
ぜんぶひっくるめて、
お出かけの楽しみなのかなと思います。
たまには、
予定を何も決めずに、
ただ気の向くままに歩いてみるのもいいかもしれません。
ふらっと入った路地裏で、
素敵なお花屋さんを見つけたり。
名前も知らない小さな神社で、
静かな空気に包まれたり。
予定調和ではない、
そんな思いがけない出会いがあるからこそ、
休日の散策はやめられないんですよね。
失敗したな、
という経験さえも、
後から振り返れば良い思い出のスパイスになっていたりします。
あのお店はちょっとハズレだったね、
なんて笑い話にできるのも、
日常を離れた場所に出かけたからこその特権です。
そういえば、
学生の頃は、
どこかに出かけるといっても、
とにかく目的地を目指して必死だった気がします。
話題のスポットに行き、
写真を撮り、
美味しいものを食べて、
はい次、というふうに。
それはそれで楽しかったけれど、
年齢を重ねるにつれて、
だんだんと楽しみ方が変わってきたような気がするのです。
最近は、
ただぼーっと過ごす時間や、
何気ない景色を眺めているだけの時間が、
たまらなく愛おしく感じられるようになりました。
これが、
大人になるということなのでしょうか。
それとも、
単に体力が落ちてきただけなのか。
たぶん、
両方かもしれませんね。
でも、
自分のペースで、
自分の好きなものだけを選んで楽しめる今の感じが、
私はけっこう気に入っています。
若い頃には気づけなかった小さな美しさに、
ふと足をとめられるようになったこと。
それは、
ささやかながらも、
確かな成長なのかなと思ったりもします。
季節はこれから、
少しずつ移り変わっていきます。
暑い夏が過ぎ去り、
心地よい風が吹く秋がやってきて、
やがて冷たい空気に包まれる冬が訪れる。
日本の四季は、
本当に忙しいけれど、
その分だけ私たちの目を楽しませてくれます。
季節が変わるたびに、
街の表情もガラリと変わる。
同じ道を通っていても、
街路樹の葉の色が変わるだけで、
まるで違う場所を歩いているような新鮮な気持ちになれるのです。
そう考えると、
私たちが暮らしているこの日常のすぐ隣にも、
小さな非日常や、
心を癒してくれる景色がたくさん隠れているということになります。
わざわざ遠くまで出かけなくても、
いつもの散歩コースをちょっとだけ変えてみるだけで、
新しい発見があったりする。
大きな旅行はもちろん楽しみですが、
身近な場所を再発見するようなお出かけも、
同じくらい大切にしていきたいなと思います。
次の週末は、
どんな靴を履いていこうか。
どんな鞄を持って、
どこへ歩いていこうか。
そんなことを考えているだけでも、
平日のちょっとした疲れが、
すーっと軽くなっていくような気がするのです。
明日からの数日間も、
きっといろいろなことがあるでしょう。
思うようにいかないことも、
ちょっと疲れてしまう瞬間もあるかもしれません。
でも、
そんなときは、
次にどこへ出かけようかという小さな楽しみを胸に、
深呼吸をひとつ。
それだけで、
目の前の景色が、
少しだけ優しく見えるような気がするから不思議です。
みなさんの次の休日が、
温かく穏やかな、
素敵な時間になりますように。
それでは、
そろそろ本当に、
明日の準備をしてベッドに入ろうと思います。
おやすみなさい。
また次の週末に、
どこかでお会いできたら嬉しいです。