彼は勝ちあがって行った。兄を事故で亡くした悔しさを差別を受けた苦しみを兄を止められなかった自分自身の不甲斐なさを吐き出す様に戦った。
迎えた決勝、身の丈2mはあろうかと言う黒人の男。筋肉はそれまでしてきた鍛練の跳ね返しの様に荒々しく膨れあがり、それでいて水が流れるかの様に美しかった。「あのアジア人、ラッキーだったがここで終わりみたいだな、残念だ。」皆、同じ様な事を観客は言った。

大きなドラの音で最後の闘いが始まる。恐らく、いや確実にギブアップはしないだろう。それは相手にも言える。つまりどちらかが死ぬまで勝負はつかない。
ドラがなるまでのカウントダウン。観客全体が大きな一つの声以上の波動となった。
金本の中で時間がゆっくり流れる。
これまでの思い出が頭の中をビデオテープが流れる様に巡る。「説明は要らない勝つだけだ!」
会場にドラが大きく鳴り響いた。
バーン!!!!
いきなり金本に向かい殴りかかる黒人。
意表をついて金本は足元に敷いている土を相手に向かい投げる。

「ウワッ、メニハイッタ、タンマタンマ…」

金本はおもいっきり黒人のスネを蹴りあげた。
ひるんでいる黒人選手の耳元でめちゃめちゃ大きい声を何回か出した。
ドレッドヘアを引っ張りあげ、人中のところに中指の第一関節の所で沢山、殴り。口の中に砂を沢山入れた。
「ギブ、ギブ…」
相手がそう言ってるのを無視して、黒人選手のカバンの中にも砂を沢山入れて、財布の中のクレジットカードとお札にションベンをかけた。免許の写真だけ「これ回して」言って皆に見せた。
黒人選手がギブと何度も言うのを聞いてから。攻撃の手を止めた。

「オマエガサベツスンナ」






終わり
金本 隆
カネモト リュウ

1961年生まれ。178cm69kg。A型。

大阪府富田林市に4人兄弟の末っ子として産まれる。父親は朝鮮人。決して裕福では無かったが幸せな幼少期を送る。しかし11の時、兄二人を事故で亡くしそのストレスから母親はヒステリックの様な状態にかかってしまう。見かねた父親は子供二人を施設へと預けるがその施設で朝鮮差別を受け19の時、兄と二人で脱走。二人とも非行に走り兄はヤクザへとなってしまう。金本はそんな兄を必死に説得し更正させようとするが24の時に兄が大麻に身体を蝕まれてしまい亡くなる。ろくな教育を受けて無いのに加え朝鮮人、兄がヤクザと言う事で仕事につくことが出来ずホームレスをしていたがある時
富裕層の娯楽であった人と人が一対一でギブアップ又は死ぬまで殴り合うゲーム「武骨」を知る。
そして、自分の父親が子供を養う為、戦い命を落としたゲームだと言う事を…

彼は立ち上がった。「俺は不器用だからこんなやり方しかできないけど優勝してこんなゲーム終わらせてやる。」
そう、このゲームの優勝の報酬は一つ、優勝の望む願いを必ず叶えると言う事だった。


つづく

部屋は水を打ったように静かだった。

故郷の大阪から上京してきて今年で3年目になる。3度目の夏。
ヒロキは夏なのに、ひんやりと冷たいクーラーの風に違和感を感じていた。


部屋は散らかっており、テーブルの上は仕送りで送られて来たであろう、インスタントラーメンのゴミ等で溢れかえっていた。掃除をする気配もない。

「はぁ…」

テレビをつける気力もなく、ヒロキはベットにスーツ姿で寝転がったままゴロゴロしていた。

Pipipi…

静かだった部屋にヒロキの携帯電話の着信が鳴り響く。
寝かけていたヒロキは寝ぼけ眼で電話取った。

「はい、もしもし…」

「あ、ヒロキー。久しぶり元気してるかぁ?」

大阪の兄貴だった。

「おぅ久しぶりやん、元気にしてるよ兄貴は?」

「俺はいつでも元気やがな」
本当に元気そうな声で兄貴は言う。

「それはよかった、ところでいきなりどうしたん?」


「いやぁな…」



「なんやねん、どうしたんや?」



「あのー俺、実はな…」





続く