そよ風と共に桜が舞った。淡い季節。
お下がりの少し柔らかい学生鞄を持ち言い様のない緊張感で一杯になる。

沢山の学生たちが居た、そういう緊張を隠すためにわざと友達と大きな声で話した。多分みんな緊張と不安で一杯なんだろう。

僕の新しい季節が始まった。

学校全体が少しフニャッとしていてまだ誰がどういう奴で誰がこういう奴と分かっていない。

小、中と目立たない僕に取って、このフニャッとしている間にいかに他人に認められるかと言うのが大事だった。

高校から目立ち出すやつは何処かしらに違和感がある。僕がそうだからまさに喋っただけでそいつが昔どんなやつか分かってしまう。変な能力がついてしまった。


そして、僕は念願の高校デビューに成功する。

よかった。僕の鱗が落ちきってしまう前に卒業しよう。
そうすれば僕の勝ちだ。

これで漫画で映画でドラマで見たような学園生活が待っている。

やった。

僕は嬉しかった。女の子とも沢山喋った。海やバーベキューにも言った。携帯のメールに絵文字を使った。プリクラだって沢山とった。彼女もできた。あんなこともした。僕は勝ったのだ。



しかし、何かを置き去りにしていた。
みんながみんな同じ個性に集まり、それはもう個性と名のつく普通だった。

僕は急に嫌気がした。
そこまでして、楽しみたいのかな。そこまでして薄っぺらな友情を語りたいかな。


ああ疲れた。



気づけばかつての彼に戻って居た。

他人に迷惑を掛けずやりたい事をする。

久々に僕らしかった。

僕は僕を生きていた。




プロ野球チップスを食べ、ベトベトの右手にDS左手にPSPを握り。口をぎらぎらさせ、煙草と空調でできたゲーセンの匂いの香水を着けた。

女子に気持ち悪いと言われようが、人気者に無理と言われようが。





僕の目は前にも増してキラキラと光っていた。
アホっ
ボケっトウフの

ドで頭ぶつけて死ぬ。
土橋奈保子
ドバシ ナオコ

17歳。女優。
4歳の時に超人気ドラマ「ジブラルタル」の主演に大抜擢される。ドバちゃんブームを引き起こす。
しかし、余りに周りがチヤホヤするため天狗になったドバちゃんはスタッフ反感を買い人気も下火に。
自信の体の成長も重なり可愛く無くなったと噂になる。
芸能界引退も考え出したそんな時、東京で偶然出会ったのが幼馴染みの金城祥二だった。

「おう、久しぶり奈保子!」

「えっ?しょうちゃん?」

「そうだよ、いつもTVで見てるよ元気してた?」

「あ、ありがとう…元気だよ…」

「嘘つけ元気無いだろ、今から時間空いてる?」

「あ、大丈夫だよ」

「飯いこ!飯!」

「え、ちょっとちょっと!」
無理矢理、手を引っ張って行く祥二。

ついて行くのに必死になってる内に少し狭めの定食屋に連れて行かれた。


「うん、ほんと美味しいここ!」

「そうだろ!この大根の煮たのとかだしが染みて最高だろ!」

「うん!久しぶりだよ、こんな暖かいご飯食べたの」

「たまには地元に帰って来いよ」

「私、もう少し頑張ってみる」

「いきなりなんだよ?」

「私やっぱり嘘つけない、何度だって立ち上がっていつか一流の女優になってみせる!もう一度、世間をドバちゃんブームにしてみせる!」



「無理じゃぼけええええ!もうお前は昔の人間なんじゃ!!!もうお前なんてみたないわあほか!!ドバちゃんブームってなんやねん、しんどおお!!きつううう!!!大根役者!!!大根!!!!若くて可愛いのいっぱいおんねんざこおおお!!!!ビニールみたいな顔しやがって!!!!!」




おわり