彼は勝ちあがって行った。兄を事故で亡くした悔しさを差別を受けた苦しみを兄を止められなかった自分自身の不甲斐なさを吐き出す様に戦った。
迎えた決勝、身の丈2mはあろうかと言う黒人の男。筋肉はそれまでしてきた鍛練の跳ね返しの様に荒々しく膨れあがり、それでいて水が流れるかの様に美しかった。「あのアジア人、ラッキーだったがここで終わりみたいだな、残念だ。」皆、同じ様な事を観客は言った。

大きなドラの音で最後の闘いが始まる。恐らく、いや確実にギブアップはしないだろう。それは相手にも言える。つまりどちらかが死ぬまで勝負はつかない。
ドラがなるまでのカウントダウン。観客全体が大きな一つの声以上の波動となった。
金本の中で時間がゆっくり流れる。
これまでの思い出が頭の中をビデオテープが流れる様に巡る。「説明は要らない勝つだけだ!」
会場にドラが大きく鳴り響いた。
バーン!!!!
いきなり金本に向かい殴りかかる黒人。
意表をついて金本は足元に敷いている土を相手に向かい投げる。

「ウワッ、メニハイッタ、タンマタンマ…」

金本はおもいっきり黒人のスネを蹴りあげた。
ひるんでいる黒人選手の耳元でめちゃめちゃ大きい声を何回か出した。
ドレッドヘアを引っ張りあげ、人中のところに中指の第一関節の所で沢山、殴り。口の中に砂を沢山入れた。
「ギブ、ギブ…」
相手がそう言ってるのを無視して、黒人選手のカバンの中にも砂を沢山入れて、財布の中のクレジットカードとお札にションベンをかけた。免許の写真だけ「これ回して」言って皆に見せた。
黒人選手がギブと何度も言うのを聞いてから。攻撃の手を止めた。

「オマエガサベツスンナ」






終わり