【蔡英文台湾総統の台湾独立発言が中国による台湾武力統一を招き、その機に乗じてイラン、ロシアが軍事行動を起こし、第三次世界大戦勃発となる危険性について】

(2月6日付で、その後の情報を追記しました。)




先に、1月3日の弊ブログ記事において、アメリカとイランが戦争状態となり、アメリカ軍の主力が中東地域に派遣された場合、中国が台湾を武力統一する可能性は高まるという指摘をいたしました。アメリカ軍は、中東とアジアの両地域で同時に大規模な軍事行動を取るだけの戦力がないからです。

しかしながら、逆に、中国が台湾に対する武力統一へ動き、アメリカが台湾防衛のために戦力を派遣した際、その機に乗じて、イラン、ロシアが、それぞれ中東、ウクライナで軍事行動を起こすという可能性も存在します。むしろ、現在、その危険性の方が高まりつつあります。以下、ご説明させて下さい。


1月11日に行われた台湾の総統選挙では、独立派・民進党の蔡英文総統が、親中国派・国民党の韓国瑜候補に勝利しました。蔡英文総統は、12月31日、「反浸透法」を成立させ、中国本土と台湾のビジネス・文化・教育面での人的・資金的交流を途絶させようとしています。また、蔡英文総統は、最近の演説で、台湾の「主権」という表現を使い始めています。主権という表現は、台湾の独立宣言とほぼ同義です。[1][2]

さらに、蔡英文総統は、総統選挙勝利後の会見で、台湾は、すでに事実上独立しており、中国はその現実を直視すべきだとまで発言しています。これは、事実上の独立宣言です。[3][4]


[台湾総統選挙で勝利した蔡英文氏]

中国は、すでに2005年に「反国家分裂法」を制定し、台湾独立派勢力が台湾を中国から切り離す事実をつくり、台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生したとき、中国は中央軍事委員会の決定を経て台湾に対し軍事介入するとしています。(下記「反国家分裂法」第8条をご参照下さい。)[5]


中華人民共和国「反国家分裂法」(2005年制定・同年施行)

第8条 「台独」分裂勢力がいかなる名目、いかなる方式であれ台湾を中国から切り離す事実をつくり、台湾の中国からの分離をもたらしかねない重大な事変が発生し、または平和統一の可能性が完全に失われたとき、国は非平和的方式その他必要な措置を講じて、国家の主権と領土保全を守ることができる。

 前項の規定によって非平和的方式その他必要な措置を講じるときは、国務院、中央軍事委員会がそれを決定し、実施に移すとともに、遅滞なく全国人民代表大会常務委員会に報告する。


台湾の蔡英文総統は、総統選挙勝利で自信を深め、今後、台湾の事実上の独立の既成事実を作るため、様々な施策を打ち出すと思われます。たとえば、アメリカ政府の現職高官が台湾を訪問したり、蔡英文総統がアメリカを訪問し、アメリカ政府高官と会談するかも知れません。

台湾副総統の賴淸德は、蔡英文総統同様、台湾が独立国家であると公言し続けていますが、報道によると、賴淸德副総統は、2月5-6日に訪米し、大統領補佐官、上院議員、下院議長と、会談しました。

また、アメリカ海軍の艦艇が台湾に頻繁に寄航するようになるかも知れません。アメリカが台湾に最新兵器を大量に売却するかも知れません。

さらに、現在アメリカは台湾関係法を制定し、台湾が軍事侵攻を受けた場合、台湾を守るために適切な行動を取るとしていますが、日本においても同様の法律が制定されるかも知れません。安倍首相は、1月20に行った施政方針演説の中で、異例なことに台湾に言及しました。

一方、中国共産党内や中国国内では、香港の長期デモを許し、台湾の蔡英文総統再選を許してしまった習近平指導部に対し、右派・保守派からの批判が強まると思われます。

また、コロナウィルス(新型肺炎)の感染拡大にともない経済活動が低下し、国民の共産党政府への批判が高まった場合、国民の目をそらすため、中国が軍事的冒険主義に動く可能性もあります。

そのため、中国は、台湾の「反浸透法」制定、および蔡英文総統の「主権」発言および「事実上独立」発言をとらえ、また、今後台湾が独立へ向けて様々な施策を実施した場合、それが「反国家分裂法」第8条の要件に該当するとして、武力による台湾統一を図る可能性があります。

すでに台湾の蔡英文総統が、事実上の独立宣言をした以上、いつ中国が台湾侵攻を始めてもおかしくありません。中国の侵攻は奇襲攻撃で始まるでしょう。

1月3日、台湾の沈一鳴・参謀総長を始めとする台湾軍幹部がヘリコプター事故により死亡しました。台湾軍指導部は、しばらくの間、混乱状態になると思われます。中国が台湾を武力統一する場合、初動作戦として、破壊工作による台湾軍幹部の暗殺が実行されるかも知れません。[6]

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[中国の移動式中距離弾道ミサイル「東風21」]

今の時点であれば、中国の1000発を越える中距離弾道ミサイルおよび巡航ミサイルは、台湾周辺地域において、台湾軍およびアメリカ軍を圧倒しています。[7]

しかしながら、もし今のタイミングを逃すと、今後、アメリカが日本に中距離ミサイルを多数配備し、中国による台湾武力統一が難しくなる可能性があります。

1月11日の台湾総統選挙で、親中国派・国民党の韓国瑜候補が勝利していれば、中国と台湾の平和的統一が進んだと思われます。

これに対し、今回の独立派・民進党の蔡英文総統の再選は、中国による台湾武力統一の可能性を高めたと思います。


ちなみに、蔡英文総統は、現在、アメリカの指示に基づいて、台湾の「事実上の独立」発言をしているものと思われます。蔡英文総統は、総統選挙の数ヶ月前までは支持率が低下し、総統選挙で敗北すると見られていました。支持率が急回復したのは、香港デモが長期化・過激化し、台湾の有権者が台湾も香港のようになることを恐れたからです。その香港デモの背景には、アメリカおよびイギリスの情報機関による扇動活動・破壊活動があります。
(「香港デモとアメリカおよびイギリスの情報機関による扇動活動・破壊活動」については、こちらのブログ記事をご参照下さい。)


[台湾総統選前に過激化した香港デモ]

言い換えますと、蔡英文総統が、今回、総統選挙で再選されたのは、アメリカ・イギリスのおかげということになります。蔡英文総統が政権を維持出来るのは、アメリカ・イギリスが支えているからです。アメリカ・イギリスの支えがなければ、蔡英文総統は政権を維持出来ません。そのため、蔡英文総統は、アメリカ・イギリスの指示に従います。

今後、蔡英文総統は、中国の軍事侵攻を引き出すため、さらに挑発的な言辞および行動に出ると考えられます。アメリカは、中国の経済的拡大・軍事力拡大を妨害するため、中国を軍事紛争に引きずり込みたいからです。


しかしながら、もし中国が台湾に侵攻し、アメリカ軍が台湾防衛のため派遣された場合、その機に乗じて、イランが中東で軍事行動を開始する可能性があります。アメリカ軍は、中東とアジアの両地域で同時に大規模な軍事行動を取るだけの戦力がないからです。

さらに、同じタイミングで、ロシアがウクライナあるいはバルト3国に侵攻するかも知れません。アメリカ軍は、対応力を失うことになります。

その場合、中東、アジア、欧州の3つの戦線に及ぶ第三次世界大戦が勃発することになります。

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アメリカは、小型の核兵器を攻撃型原子力潜水艦に搭載することを決定しました。イランとアメリカの間で軍事紛争が発生した場合、アメリカは戦力の不足を補うため、イランに対し戦術核を使うという脅しをかけるかも知れません。

それに対しイランは、数週間あるいは数ヶ月間で核兵器を製造し、もしイランに対しアメリカが核攻撃を行ったら、イランも何らかの方法でアメリカ国内に核兵器を運搬し、アメリカの大都市で起爆すると逆に脅しをかける可能性があります。イランは、すでに秘密裡に、北朝鮮から核兵器製造に必要な濃縮ウランを入手しているかも知れません。

1月3日、アメリカは、ドローンによる攻撃で、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害しました。ソレイマニ司令官はイラン国軍の司令官であり、その殺害は戦争行為にあたります。アメリカは、宣戦布告なしに戦争行為を行ったことになり、ジュネーブ条約に違反し、国際法違反の行為となります。つまり、戦争犯罪であり、殺人です。[8][9]


[殺害されたイラン革命防衛隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官]

現在、イランは、アメリカによるソレイマニ司令官殺害が戦争犯罪にあたるとして、国際刑事裁判所への提訴を準備しています。国際法の専門家によると、アメリカが有罪判決を受ける可能性は高いということです。[10]

アメリカは、中国・イラン・ロシアに対する戦力不足を補うため、今後、NATO軍がアジアおよび中東地域においても軍事行動を行うよう要請するでしょう。また、アメリカは、日本の自衛隊に対し安保法制に基づく米軍への協力を要請するでしょう。[11][12]


中東情勢および台湾情勢への注視が必要です。アメリカが戦争を開始すれば、日本の自衛隊に対し、参加要請が来るからです。

中国が台湾を武力統一する場合、中国が、アメリカの武力介入を阻止するため、在日米軍基地へ弾道ミサイルによる攻撃を行うことも考えられます。これに対し、アメリカは、「インサイド-アウト防衛戦略」を実施し、在日米軍を退避させつつ、自衛隊を中国弾道ミサイルの射程範囲内で戦わせようとするでしょう。
(「インサイド・アウト戦略」の詳細については、こちらのブログ記事をご参照下さい。)

このため、日本政府は、中東紛争および台湾紛争のいずれの事態に対しても、早期に明確な中立宣言を出し、日本国民の生命・身体・自由を守るべきです。

日本国民は、戦争犯罪を繰り返すアメリカと同盟関係にあることの危険性を認識すべきです。日米安全保障条約を縮小し、アジア諸国との新しい安全保障体制を構築すべきです。
(「日米安全保障条約の縮小」については、こちらのブログ記事をご参照下さい。)

CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)をベースに、そこに日本が正式参加し、ASEAN地域フォーラムを合体させ、新しいアジア地域の集団安全保障の仕組みを構築すべきです。
(「新しいアジア地域の集団安全保障の仕組み」の詳細については、こちらのブログ記事をご参照下さい。)

以上


参照資料:
(1) "Taiwan Passes Anti-Infiltration Act Ahead of Election Amid Opposition Protests", The Diplomat, January 3rd, 2020

(2) "Tsai stresses Taiwan's sovereignty", NHK News, January 2nd, 2020

(3) "Taiwan 'already independent,' Tsai Ing-wen warns China", The Japan times, January 15th 2020

(4) "Tsai Ing-wen says China must 'face reality' of Taiwan's independence", The Guardian, January 15th 2020

(5) 「反国家分裂法」(全文)中華人民共和国駐日本国大使館

(6) "Copter crash kills Taiwan's top military officer, 7 others" , Yahoo News, January 3rd, 2020

(7) The US-China Military Scorecard, RAND Corporation, 2015

(8) "Iran's Qassem Soleimani killed in US airstrike at Baghdad airport", Al Jazeera, January 3rd, 2020

(9) "US airstrike that killed Qassim Soleimani of Iran violates human rights law, UN official says", New York Post, January 3rd, 2020

(10) "Iran has a 'shockingly strong' war-crimes case against Trump over Soleimani's killing — and it could win", Business Insider, January 16th 2020

(11) "Trying to Turn NATO Into NATOME: A Trump Administration Adventure", The National Interest, January 13th 2020

(12) "Will China be NATO's Next Challenge?", Newsweek, December 17th 2019


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。