こんにちは。渡邉利咲です。
月下美人――
「月の下の美人」と書く、とても美しい名前の花です。
月下美人は夜になると静かに花を開きます。
そして、その姿を目にするよりも先に、漂いはじめた芳香によって、 「あ、咲いたのだ」 と気づくことがあります。
暗闇の中でひっそりと開きながら、その存在を香りによって知らせる花。
私はこの月下美人に、成熟した女性が内側に秘めている深い智慧と、とてもよく似たものを感じます。
フラワーエッセンスとしての月下美人(クィーン・オブ・ザ・ナイト)は、 魂の奥深くに眠っていた女性性の智慧へとつながることをサポートしてくれるエッセンスです。
女性の人生には、いくつもの季節があります。
若い頃には、外の世界へ向かって自分を広げていく時期があります。
人を愛し、働き、子どもを育て、人間関係の中で喜びや悲しみを経験し、失敗し、学び、何度も自分自身を作り直していきます。
そして年齢を重ねていくにつれて、それまで外側へ向かっていた意識が、少しずつ内側へ向かい始めることがあります。
長い人生経験によって、「目の前で起きていること」だけではなく、その背景にある人間関係や時間の流れ、その先に起こり得ることまで、 広い視野で捉えられるようになっていきます。
これは単に知識が増えるということではありません。
経験を通して培われた、生きた智慧と呼べるものなのだと思います。
古来、多くの社会では、年長の女性たちが若い世代を支える役割を担ってきました。
子どもの誕生を助け、
病人を看取り、
薬草を使い、
食べものを保存し、
季節の変化を読み、
家族や共同体の相談役となる。
そうした女性たちは、本で学んだ知識だけではなく、 長い年月をかけて身体と生活の中で蓄積された智慧を持っていました。
植物がいつ芽を出すのか。
どの季節にどの植物を採るのか。
どの草を傷に使うのか。
どの植物を食べものとして利用するのか。
空や星、月の動きから季節を読み、大地の変化を感じ取る。
そこには、現代のように医学、植物学、薬学、天文学などが細かく分けられる以前の、 自然と人間をひとつながりのものとして見る知恵がありました。
もちろん、昔の女性たちすべてが薬草の専門家だったわけではありません。
しかし、民間治療、助産、薬草、食、暦など、生活に密着した知識を女性たちが担っていた地域は数多くあります。
それは大学や専門機関で体系化された学問とは少し違う、 何世代にもわたって受け継がれてきた生活の智慧でした。
そしてヨーロッパの歴史には、「魔女」と呼ばれ、多くの人々が迫害された暗い時代があります。
現在の歴史研究では、魔女裁判によって処刑された人々は数万人規模と推定されており、 その多くを女性が占めていたと考えられています。
魔女として告発された人々すべてが薬草医や助産師だったわけではありません。
しかし、その中には、 薬草を知り、病人を癒し、出産を助け、地域の人々の相談に乗っていた女性たちもいました。
私は、この歴史を考えるとき、単に「昔の残酷な出来事」として片づけることができません。
なぜなら、
女性が持つ直感、
自然とのつながり、
身体の智慧、
植物についての知識、
年長の女性が若い世代へ知恵を渡していくこと。
そうしたものを恐れたり、価値の低いものとして扱ったりする感覚は、 形を変えながら現代にも残っているように感じるからです。
そして、女性の人生の後半には、 もう一つの大きな変化があります。
それが閉経です。
閉経は、単に生殖機能が終わるという出来事ではありません。
身体の大きな転換期であると同時に、 人生そのものを見直す時期になる女性も少なくありません。
これまで誰かのために使ってきたエネルギーを、
これから何に使うのか。
自分は何を大切にして生きるのか。
次の世代に何を渡していくのか。
人生の後半だからこそ見えてくる問いがあります。
若さとは違う美しさがあります。
経験したからこそ分かることがあります。
失ったからこそ見えるものがあります。
長い時間を生きたからこそ、 人の言葉の奥にある気持ちや、 ちょっとした表情、 声の調子、 仕草の変化から、 多くのことを感じ取れるようになることもあります。
かつて多くの文化では、このような人生後半の女性を、 単なる「年老いた女性」としてではなく、 Wise Woman――智慧ある女性として見る考え方がありました。
若い人を支え、 必要なときには注意を与え、 理不尽なことには毅然として立ち、 共同体の未来を見守る存在です。
月下美人は、昼には咲きません。
陽の光の中ではなく、 夜が深まった頃、 静かに花を開きます。
それはまるで、人生の前半にはまだ開かなかった何かが、人生の夜に差しかかったとき、ようやく花を開くようにも見えます。
若さの光の中では見えなかったもの。
忙しい日々の中では聞こえなかった声。
心の奥深くに沈んでいた記憶や智慧。
それらは失われたのではなく、 深い井戸の底に静かに眠っていたのかもしれません。
クィーン・オブ・ザ・ナイト(月下美人)は、陰陽でいう「陰」の性質と深く響き合う花です
外へ向かって拡大していく力ではなく、 内側へ降りていく力。 静けさ。 受容。 直感。 育む力。 暗闇の中から何かを見つけ出す力。
フラワーエッセンスとしての月下美人は、 そうした女性性の深い層へと意識を向けることをサポートします。
そして私のエッセンスの捉え方では、今世だけではなく、いくつもの過去世を通して培われてきた女性性の智慧に触れていくことも、この花のテーマの一つです。
妖艶な白い花が、夜の闇の中、月明かりを受けて静かに輝くように。
閉経期、そして人生の後半に差しかかる女性が、 自分の内側にある深い井戸へと降りていき、そこに眠っていた智慧を汲み上げていく。
月下美人は、「若さを失う」という物語ではなく、これまでとは違う智慧が花開いていく時期を象徴する花なのかもしれません。
夜だからこそ咲く花があります。
そして、人にもまた、 人生の夜になって初めて開く花があるのだと思います。
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