これは以前書いた
「人材を使いつぶす中間層――なぜ「問題がない組織」を演じ続けるのか」
に関係する記事ですね。上記のような考えだと今回書いたことががしばしば発生しています。
ただ、また取り上げたいのですが、ここでの一番の問題は管理職が部下を
「管理職の代わりにする」
これです。
その癖、俺が決めると自分の都合や興味で肝心な決定権は渡さないという、昔の悪い習慣をいまだに持ち続けている管理職です。
休養を妨げるは、業務でもストレスを与えるはということがあります。これは実在していますよ。
休養中の部下を「業務の相談相手」にしてはいけない
――管理職が責任を都合よく戻す構造
部下が病気や体調不良などで一定期間の休養に入ったとき、管理者には二つの責任があります。
一つは、業務を止めないこと。
そしてもう一つは、休養している部下を業務から離すことです。
ところが現実には、この二つが混同されることがあります。
「仕事を止めてはいけないから」と、休養中の本人に業務を確認する。
最初は一つの確認だったものが、
「ついでにこれも教えて」
「これはどうしたらいい?」
「○○について知っている?」
と増えていく。
そして気がつけば、休養しているはずの部下が、職場の相談窓口になってしまう。
これは、単なる連絡のマナーだけの問題ではありません。
管理者が本来引き受けるべき業務上の判断や情報整理を、休養者に戻してしまっているという問題です。
「本人に聞けば早い」が管理になっていないか
部下が休んだとき、仕事について分からないことが出てくる。
そのとき、
「本人に聞けば一番早い」
という考え方は、一見すると合理的です。
しかし、管理者として考えるなら、まず確認すべきなのは本人ではありません。
まず、
-
過去の資料
-
メール
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引き継ぎ資料
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共有フォルダ
-
業務記録
-
過去の事例
-
他の担当者
-
関係部署
-
上位者
などを確認する。
それでも分からない。
さらに、本人しか分からない情報であり、確認しなければ業務に重大な支障がある。
そこで初めて、本人への確認を検討する。
この順序が重要です。
「本人に聞けば分かる」ことと、「本人に聞くべき」ことは同じではありません。
休養者を「相談相手」から「管理職の代わり」にしてしまう
さらに注意したいのは、単なる情報確認を超えて、休養者に判断や調整まで求めてしまうケースです。
例えば、
「この仕事、どうしたらいい?」
「この人にはどう伝えたらいい?」
「この案件はどう判断する?」
「去年はどうやっていた?」
「じゃあ、○○さんに確認しておいて」
といったやり取りです。
最初は「教えてもらっている」だけに見えても、内容を分解すると、
情報収集 → 判断 → 調整 → 実行
という管理業務の一部を、休養中の部下に戻していることがあります。
ここまで来ると、単なる確認ではありません。
休養者を事実上の管理職の代替要員にしているとも考えられます。
管理職が「責任を一部だけ取る」という問題
さらに複雑なのは、管理職が完全に責任を放棄するわけではないことです。
むしろ、
「最終的な責任は自分が持つ」
と言いながら、実際の業務では、
「ここはあなたのほうが詳しいから」
「ちょっと判断しておいて」
「これだけ確認しておいて」
と、都合のよい部分だけ部下に投げることがあります。
これは一見すると、
「部下を信頼して任せている」
ようにも見えます。
しかし、問題は責任と権限のバランスです。
部下に判断させる。
部下に調整させる。
部下に実務を進めさせる。
ところが、問題が起きたときには、
「最終的には自分の責任」
として管理職側に戻る。
逆に、問題が起きなかったときには、
「部下がやってくれた」
という状態になる。
このように、責任・権限・実務が都合よく分割されているなら、健全な委任とは言いにくくなります。
「管理職化した部下」が生まれる
こうした状態が長く続くと、特定の部下が実質的に「管理職化」していくことがあります。
正式な役職はない。
決裁権もない。
人事上の権限もない。
しかし、
-
管理職が判断するための材料を集める
-
他の職員との調整をする
-
問題が起きたときに対応する
-
業務の段取りを考える
-
管理職が分からないことを補う
-
管理職の代わりに全体を把握する
という仕事をしている。
これは、単なる「仕事ができる部下」ではありません。
場合によっては、正式な管理職ではない人に、管理職的な仕事だけが集中している状態です。
そして、その人が休んだ途端、
「どうしたらいい?」
「これは誰に聞けばいい?」
となる。
そこで初めて、実はその人が管理職機能の一部を担っていたことが見えてきます。
それなのに、普段は「部下」として扱われる
さらに問題なのは、そうした部下が常に管理職として扱われるわけではないことです。
普段は、
「それは自分で考えて」
「上司の指示に従って」
「あなたは部下なのだから」
と上下関係を強く示す。
ところが、自分が困ったときだけ、
「どう思う?」
「どうしたらいい?」
「これを頼める?」
と、対等な相談相手のように扱う。
これは非常に都合のよい関係になり得ます。
つまり、
権限は与えないが、必要なときだけ管理職としての能力を使う。
という構造です。
本当に権限委譲するのであれば、それに見合った情報・裁量・責任・評価も必要です。
そこを与えずに、困ったときだけ管理職的な仕事を求めるのであれば、部下の能力を「便利な補助装置」のように使ってしまう危険があります。
休養すると、その構造が見えてくる
そして、この問題は部下が休養したときに非常に分かりやすくなります。
今まで、
「○○さんに聞けばいい」
で済ませていたものが、突然分からなくなる。
「○○さんがいないから困る」
となる。
しかし、それは単にその部下が優秀だったというだけではありません。
管理職が本来担うべき機能の一部を、その部下に依存していた可能性があります。
だからこそ、休養者が出たときに、
「本人がいないから困る」
で終わらせてはいけません。
むしろ、
「なぜ本人がいなければ判断できないのか」
「なぜ本人に聞かなければ業務が進まないのか」
「誰が管理職として判断することになっているのか」
を見直す必要があります。
休養中まで「管理職代替」を求めてはいけない
特に問題なのは、そのような部下が休養に入った後まで、
「これだけ教えて」
「この件だけ相談したい」
「これだけ判断して」
と求めることです。
それでは、身体的には職場から離れていても、精神的には管理職業務から離れられません。
しかも、
「自分がいないと職場が困る」
という責任感を持っている人ほど、こうした相談を無視しにくいでしょう。
結果として、休養のために職場を離れたはずなのに、本人が職場の問題を引き続き背負うことになります。
本当の委任とは何か
もちろん、管理職が部下に仕事を任せること自体は悪いことではありません。
むしろ、適切な委任は組織運営に必要です。
問題は、
権限を与えず、責任だけ負わせること。
あるいは、
普段は部下として扱いながら、困ったときだけ管理職のような働きを求めること。
さらに、
管理職自身が引き受けるべき判断を、都合のよい部分だけ部下に戻すこと。
です。
健全な委任なら、
「あなたにこの範囲を任せます。必要な権限も渡します。最終的な責任の所在も明確にします」
となります。
一方で不健全な状態では、
「これはお願い」
「あなたのほうが詳しいから」
「ちょっと考えておいて」
と曖昧なまま仕事だけが移っていきます。
この違いは非常に大きいものです。
「責任を取る」と「責任を分散する」は違う
管理職が、
「何かあれば自分が責任を取る」
と言うこと自体は大切です。
しかし、その言葉だけで部下に判断をさせてよいわけではありません。
管理職が責任を取るのであれば、管理職自身が状況を把握し、必要な判断をし、部下が無理なく仕事を進められる環境を作る必要があります。
そうではなく、
「最終責任は自分が取るから、実際の判断や調整はあなたに任せる」
となると、場合によっては責任を引き受けているというより、実務上の責任を分散させているだけになってしまいます。
休養者への配慮は、管理職自身の仕事を問い直す機会
だからこそ、部下が休養したときに最初に考えるべきなのは、
「本人にどう聞くか」
ではなく、
「本人がいなくても、管理職として何を引き受けなければならないのか」
ではないでしょうか。
資料を探す。
業務を整理する。
他の職員に確認する。
優先順位を決める。
必要なら自分が判断する。
上位者に相談する。
そして、今まで特定の部下に集中していた仕事を見直す。
これが管理職の仕事です。
「人が休んでも回る職場」を作る
一人の人が休むだけで、
「分からない」
「判断できない」
「誰に聞けばいい?」
となる職場には、何らかの属人化や役割の偏りがあるかもしれません。
だから、休養者が出たことを単なる「人手不足」と捉えるだけではなく、
その人にどこまで仕事を依存していたのかを確認する機会
と考えることもできます。
そして、休養している本人には、
「こちらで対応します」
「必要なことはこちらで整理します」
「復帰したときに困らないようにしておきます」
と言える。
それこそが、人を守りながら仕事を回す管理なのではないでしょうか。
最後に
部下が休んだとき、その人に聞けば早いことはあるでしょう。
しかし、早いことと、正しい管理であることは同じではありません。
特に注意したいのは、普段は「部下」として扱っている人を、困ったときだけ「管理職の相談相手」や「管理職の代替要員」にしてしまうことです。
それが繰り返されれば、本人は正式な権限を持たないまま、管理職の仕事を担うようになります。
そして、その人が休んだ途端に職場が混乱する。
そのとき問われるべきなのは、
「なぜ休んだ人が教えてくれないのか」
ではありません。
「なぜ、その人がいなければ管理できない状態になっていたのか」
です。
休養中の部下に確認する前に、管理職自身が確認する。
部下に判断を求める前に、自分が判断する。
部下に仕事を任せるなら、権限と責任の範囲を明確にする。
そして、困ったときだけ部下を管理職化しない。
人を守ることと、管理することは対立しません。
むしろ、人が休んでも仕事が回り、誰か一人に管理職の代替を背負わせなくても済む職場を作ることこそ、管理職の責任の一つなのではないでしょうか。

