年金資産も私達の資産の一部(しかもかなり多額の)で、運用目的が老後資金の場合は年金資産で不足する部分を自己資金で賄うのが普通です。


皆さんの加入している年金の種類は大雑把に、下記のようなものです。


●自営業業者(小規模経営者):国民年金(+国民年金基金、中小規模企業共済、個人型401k等は任意で)


●会社勤務:国民年金+厚生年金(+企業年金or個人型401kなど)


国民年金や厚生年金の受取り額は下記の社会保険庁のサイトで計算できますので、将来、自分がどのくらいの年金を受取れるのか確認してみると良いでしょう。


自分でできる年金額簡易計算  


(以前に社会保険庁から郵送されてきた、年金特別便でも受取可能額が計算できます。)



例えば、65才から80才まで、毎月15万円ずつ年金が受取れる人がいたとすると、


15万円/月×12カ月×15年=2700万円


かなり大雑把ですが、2700万円がその人の年金資産となります。


もし、老後の生活に月30万円必要なら、残りの2700万円は貯蓄or退職金等でカバーしなければなりません。


このように、資産運用を行う場合には、幅広い視野と目的に応じた資産運用設計が必要となるのです。


ちなみに、私達の年金基金も、異なるアセット・クラスあるいは一部を海外に、資産を分散して運用されていますが(国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%、短期資産5%)、7割近くが国内債券で運用されていますので、運用によって目減りするリスクはあまり考えなくて良いでしょう。


ただし、「将来日本の財政はギリシャ等のように破綻して、国債が暴落して年金資産が大幅に減少し、税金による年金給付の補てんもできなくなり(年金給付は一分、税金より拠出されています)私達の年金受取額が大幅に減少する」


という、かなり悲観的な考えをお持ちの方は、老後資金のためにある程度外国資産での運用比率を上げる、という選択肢もあるかもしれませんね。


しかし、皆さんもご存じのように、現在の年金制度の最大の懸案事項は、「少子高齢化」ですので、こちらのほうが直接あるいは間接的にみなさんの自己負担を増加させる可能性は高いと言えます。


年金問題に関しては、またの機会に。




 個人の資産運用設計をするにあたり、資産の対象となるのは給与収入による現預金だけではありません。


持家の方はその不動産価値も個人資産評価の中へ入れておくべきですし、会社で自社株の持ち株会等へ入っている場合も当然それを個人資産の評価に加えて、運用を考えるべきです。


 例えば、サブプライム危機の前は、日本でも主に都心において不動産価格が高騰していましたが、その時に自宅用に都心にマンションを購入し、さらに金融資産としてリート(不動産投資信託)を購入していれば両方の資産価値の下落により、大打撃を受けていたでしょう。


 少し話が外れますが、ローンを組んでマンションを購入していた場合、何らかの要因で定期的な収入が減ってしまい、ローンの返済ができなくなってしまったとしたらどうなるのでしょうか?


もし、マンションを売却できても、その価格が購入時より下落していれば、住居を失ってローンだけが残ってしまうという最悪の結果になってしまう場合もあり得ます。


 また、自分の働いている会社の株式を大量に保有している人がいて、もし、その会社が倒産したとしたらどうなるでしょうか?


その人は、保有している自社株式が無価値になった上に、失業して給与収入をも失うことになるわけですから、これもまたダブルで大打撃を受けることとなります。


自社株を購入する時は、給与収入の源泉も自分が働いている会社であることから、2重にリスクを負っていることを認識すべきです(ストック・オプションも同じ)。


 このように、広い範囲で自分の資産(そしてその性質)を把握することが、資産運用をするにあたって必要なのです。


 (ちなみに、ローンをかかえながら、株式などの高リスク資産に投資するのは、さらに借金を増やしローンの返済にも支障をきたす場合もあるのでやめましょう。)


 

 そして、この他に、以外に忘れがちなのが年金資産です。


(次回へ続く)




分散投資のリスク低減効果① では、どのように分散させたらよいかご説明しました。


もう1度おさらいすると、以下の3つの方法で分散させれば良い、といいうことでしたね。


(1)同じアセット・クラス内での分散

(2)異なるアセット・クラスで分散

(3)異なる国(地域)に分散


では具体的にどのような金融商品を購入すれば良いのでしょうか?


自分で個別の株式や債券を買っても良いのですが、どのような銘柄を買えば良いのか初心者の方ではまずわからないでしょうし、知識や経験のある方でもかなりの労力がかかります。


そこで利用したいのが投資信託です。


多少、手数料がかかりますが、プロが運用してくれて、多くの銘柄に分散投資されていますので(1)の「同じアセット・クラス内での分散」は手軽にできます。


(2)の「異なるアセット・クラスでの分散」も、株式、債券、不動産、商品(金や原油など)など、アセット・クラス別の投資信託がいろいろとありますので、それらを組み合せて購入すればOKです。


(3)の「異なる国(地域)に分散」も、アメリカ、ヨーロッパ、日本、新興国など様々な国や地域に投資している投資信託がありますし、1つの投資信託で世界中の国々に投資できるものもありますので、それらを使えば、容易に「地域分散」ができます。


ところで、投資信託で思い出した方もいらっしゃると思いますが、効率的市場とインデックス・ファンド のテーマで何度かお話しましたように、アクティブ・ファンドは長期的にはインデックス・ファンドの運用成績を上回るのがかなり難しいので、インデックス・ファンドを中心にして運用するのが良いと思います。


また、上記のような分散運用を1つの投資信託でやってくれるものもありますが、それらの多くは投資信託を組み合せて運用しています(ファンド・オブ・ファンズと呼ばれるもの)。


したがって、そのファンド・オブ・ファンズの購入者は、そのファンドの手数料とファンドが購入するファンドに支払う手数料を2重に支払うこととなるため、支払い手数料が割高になってしまう、という欠点があります。


運用割合を管理するだけなら、そう手間もかからないので(基本的には1年に1度の見直しでOK)インデックス・ファンドを利用して、なるべく自分自身で運用することをお勧めします。


ただし、自分で運用すると、つい欲に負けて余計な売買をして、結果として損をする場合も多いので、欲に負けそうな方は、このような分散投資をしてくれる投資信託を購入するのも良いかもしれませんね。