“ZERRY”が笑いで時代をぶっ壊した夜。
RCサクセションのアルバム『COVERS』が発売中止になった1988年。
「放送できない」「売れない」「危ない」――
そんな時代の空気の中で、清志郎が次に選んだ手段が、覆面バンドTHE TIMERS(ザ・タイマーズ)でした。
つまりこのバンドは、偶然ではなく、必然から生まれたロックの反逆だったんです。
そんなタイマーズのデビュー曲は、モンキーズの名曲「Daydream Believer」。
清志郎が日本語詞をつけた「デイ・ドリーム・ビリーバー」は、
日常の中の優しさと切なさを描いた日本語カバーの傑作。
朝のコーヒー、いつもの笑顔――
その何気ない風景の中に、時代の哀しみを忍ばせる。
清志郎らしい、人間の温度が通った歌です。
そして忘れられない、1989年10月13日の夜のヒットスタジオ生放送事件。
予定曲を差し替えて放送禁止ギリギリのメッセージをぶちまけた、あの衝撃の夜。
スタジオが凍りつき、視聴者は息を呑んだ。
でもZERRYは笑っていた。
あの一瞬で、彼はロックがまだ生きていることを証明してみせた。
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同年11月8日にリリースされたファーストアルバム『THE TIMERS』。
オープニングとエンディングでは、モンキーズのテーマを大胆に替え歌化。
冒頭では“いつでもどんな時も Timerを持ってる♪”、
ラストでは“そろそろ Timerが切れてきた♪”と歌う。
この構成自体がタイマーズのメッセージ。
「爆発するために生まれ、燃え尽きるまで笑い続けたバンド」――そんな印象です。
アルバムには「総理大臣」「偽善者」「税金」「HELLO」など、
時代と社会を鋭く風刺した曲が並ぶ。
清志郎は、政治も放送もタブーも恐れずにギターを鳴らし、
痛烈な言葉をあえて明るく歌に変えた。
笑って聴けるのに、胸の奥にズシンと残る。
“危ない言葉”をポップに包む天才的なセンス。
今のミュージシャンに、こんな曲が歌えるだろうか?
炎上やSNSの空気を恐れず、笑いながら社会を切り裂く――
そんな時代は、もう遠くに行ってしまったのかもしれません。
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そして、アルバムの中でも特に印象深いのが「ロックン仁義」。
古賀メロディーを思わせる日本調の旋律に、
清志郎流の皮肉とユーモアが融合した異色の名曲。
どこか懐かしく、でも牙を剥いている。
音楽業界の形式や流行を一刀両断しながらも、
最後には「筋を通すロック魂」がしっかり息づいている。
この曲こそ、清志郎という人の“けじめ”そのものだと思う。
さらに、タイマーズといえば、あの個性的なメンバー名。
ZERRY、TOPPI、BOBBY、PAH。
どこか懐かしい響きで、まるで大御所GSグループを思わせる。
これもまた、清志郎流の風刺。
音楽業界全体をパロディにして笑い飛ばしながら、
自分たちのロックを貫く――それがタイマーズの美学。
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総括すると――
『THE TIMERS』は、清志郎が“言いたいことを言うために選んだ自由の手段”だった。
ユーモアも怒りも優しさも、すべてが音に詰まっている。
そして、そのどれもが愛のある風刺だった。
“いつでもどんな時も Timerを持ってる♪”
――この言葉は、今の時代にこそ響く。
反骨を忘れず、笑って歌う。
それこそが、清志郎が残した“ロックン仁義”なんだと思う。
36年経った今も、ZERRYのタイマーは鳴り続けている。