前回までのあらすじ:
藤堂物産で働く本田承太郎はこの会社で働くサラリーマン。
部下の前田と共にお好み焼き屋に来ていて
お店の悪い状態を発見し考察していました。
第58話:食品偽装の蔓延する料理業界
本田承太郎に同行していた部下の前田がこんなことを言いました。
「このネギ焼きも美味しいですね」
そう言われて本田がメニューに注目すると
写真と表記には、
「九条ねぎのネギ焼き」と、書いてあります。
九条ねぎと言うのは京野菜として有名で
青ネギの一種ではあるが葉鞘が太いのが特徴だ。
しかし、どう見てもこのお好み焼きの
上に乗っているのは白ネギ・・
一般的な青ネギよりもどちらかというと
白ネギ(長ネギ)に近い。
白い部分が太く詰まっているのが特徴で
見る人が見ればすぐに解ります。
ここで、本田はある事を思い出していました。
「そう言えば玄関の入口付近に
長ネギと書かれたダンボールがあったな」
ここで本田承太郎は気づきました。
「このお店は食品偽装している」
しかも、堂々と白ネギを使って
ダンボールまで放置して・・
こんなずさんな管理があるのだろうかと呆れてしまったのでした。
最近ニュースでも話題になっている
メニュー誤表示と商品偽装問題・・
本田承太郎はひとまずこのお店を後にして
食品偽装の実態について調べることにしました。
調べるといっても一般人が取材して
そんな裏事情を教えてくれる店はありません。
そこで、本田承太郎は以前研修で一緒になった、
ある焼肉屋の店長に連絡を取りました。
彼は研修中に本田承太郎によって不正を暴かれ、
弱みを握られているので本田の質問に
素直に答えるのでした。
「加地店長、飲食店では食品偽装が行われてるんですか?」
「相変わらず本田さんは聞きにくい事を聞きますね。」
「最近はニュースでも話題になっているでしょう?」
「偽装というよりも代替え商品は普通にあります」
加地店長によると
食材管理というのは大変な作業で
食品はいわば「生き物」を扱う仕事です。
お店が繁盛すると食材が無くなったり
品切れになる事も多いのですが
飲食店ではメニューを通常通り提供するのが当たり前で
経営的にもメニューの品切れはタブーとされています。
理由は取れる売上が取れなくなる事はもちろん、
お客様の食べたいものが無いという
満足度の低下や信用を失う恐れがあるからです。
その為、調理場にいる責任者は食材が切れると
品切れさせない為に近くのスーパーに買い物に走ったり、
「代替え」の食材で調理を行ったりするのだそうです。
お客様にとっては、
「そんな詐欺まがいのことをしても良いのか?」
と思ってしまうかもしれませんが
加地店長によるとそれが普通だと言っていました。
問題は、この「代替え食材」が元の食材の
価値を下回る場合で起きているのです。
有名レストランでも同じような問題を
指摘されたニュースがありましたが
調理長は「ホタテが切れたらアワビで出す」という
対処を取っていました。
調理の世界では食材を管理できなくて品切れさせるのは
お客様に失礼なので通常よりも良い食材を使って
商品を提供する事は大いにあるそうです。
その際に当然接客係のお客様への声かけも
事前に行っておけば逆に満足度は高くなるかもしれませんが
この通例が作業化されて
悪い事例では通常価値以下の食材で
商品を提供してしまうこともあったのかもしれません。
本田承太郎は加地店長に更に詳しく
食品偽装やメニューの偽装について
話を聞いていきました。
つづく