第59話:食材偽装はミシュラン掲載店でも | 本田承太郎

本田承太郎

飲食店開業を目指す為に学ぶべき知識。
スキルと資金・経験を積んで
自分の城を持つ為にやるべき10の事。

前回までのあらすじ:
藤堂物産で働く本田承太郎はこの会社で働くサラリーマン。
不振店視察でお店の改善点を見ているうちに
メニュー偽装に 気づいた本田は以前出会った加地店長に
飲食店のメニュー表示の事情を聞いてみました。

第59話:食材偽装はミシュラン掲載店でも

以前焼肉屋の研修で本田の情報網となった加地店長に
最近ニュースでも話題の

「飲食店のメニュー誤表示」 について
詳しく話を聞いてみました。

加地店長によると、
食品の「代替え」はよくある事らしく

厨房で働く人間は「品切れ」を
タブーとして長年教育されて行くのが普通だそうです。

その為、
偽装する気持ちではなく、
「例え損をしてでも良い食材で代替えして品切れさせない」
と言うのが通例となる場合が多いようです。

それが続くと、従業員は品切れさせない為に
「代替えすることに慣れてしまいます。」

そして食材が切れると近くのスーパーで
売っている
食材を買ってきて使ったり、

どうしても代わりの食材で
元の食材よりも良い物がなかった場合でも
交換して提供してしまう場合があるそうです。

すべてのお店がそうであるとは
言い切れませんが
厨房設備の規模が大きくなればなるほど
このリスクは増えていきます。

逆に品切れも代替えもしたくない為に
「過在庫」してしまうようなお店は
在庫破棄などで利益の減少や
食材の鮮度が落ちてしまい、更には
お店も繁盛しなくなってしまうというジレンマがあるのです。

「メニュー誤表示とメニュー偽装の違いは何なんですか?」
本田承太郎がそう聞くと加地店長は
言いにくそうに答えました。

「私も知り合いのレストランの話を聞いただけですが・・・」

そう言って話始めた話は信じがたい内容だったのでした。

●メニューの誤表示とメニュー偽装は全然違います。

まず、メニューの誤表示とは
文字通りメニューの
内容を
誤って表示してしまう記載ミスのことです。

単純に印刷ミス・誤字脱字・画像配置などの
明らかにミスだと分かる場合です。

次にメニュー偽装についてですが
ウリにしている食材や目玉品目などをアピールしている場合で
メニュー内容と実際の提供した商品の内容が違う場合は、

「メニューの表示変更内容がキッチンスタッフに伝わっていなかった」

と言うような言い訳は
誤表示というには苦しすぎる訳です。

最低でも経営者・管理者の重大なミス、
責任問題で厳しい処分が課せられるべきです。


加地店長によると
悪いお店の実態は深刻なのだそうです。

偽装工作を行う最大の理由は
「不当であっても利益を増やすため」です。

飲食に直接従事する者が食品を偽装することは
購入者やお客様を裏切る行為なので
普通の人は罪悪感でとてもサービス業を続けることはできません。

しかし、サービス業務に従事しない
管理職やオーナーなどの人格が疑われる場合は
不当でも利益獲得に走る場合があるそうです。

飲食店においては
レジからお金を盗むという行為よりも悪質とされる

「お客様を裏切る行為」

が起こってしまうのです。

偽装の裏側は、
消費者に解りえないことをすり替える巧妙な手口です。

その点で言うと、
調理された食材を言い当てたり、
品種が違う事を見抜けるのは
ごく一部の人間だけなので
偽装しやすいということが言えます。

もちろん調理場の協力なくしては
偽装できませんし料理人にはプライドがありますので
そうそう偽装に協力するような事はありません。

それでも巨大な組織や管理業務に携わらない人物だと
お互いに偽装工作を発見する事は難しいのかもしれません。

「具体的にはどういった事例があるんですか?」

本田がそう聞くと加地店長は実際の事例を話してくれました。

しかし、その内容は
「聞かなければ良かった。」
と思う

後味の悪い内容だったのでした。


つづく

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