商品の管理単位、品番の付け方でまず揉める | 事件は物流現場で起こっている

事件は物流現場で起こっている

30数年、物流の現場で働いてきました。その時に思ったこと、考えたこと、感じたこと、をつらつらと書いていきます。年寄りの戯言です。

これまで物流倉庫の一大事、出荷ミスに関連するお話をしてきました。

次に物流倉庫の大きな課題の一つである在庫管理について。

 

在庫管理とは、倉庫の何の商品がいくつあるかを把握する事、そして会社の帳簿在庫と商品現品の在庫数に差異がでないようにコントロールする作業です。

 

私はどこの倉庫でも在庫管理で頭を悩ませました。

在庫数を一回正しく数え在庫数をリセットします。普通に考えたら、その後に入荷した数は足し、出荷した数を引けば常に倉庫にある正しい在庫数はわかるはずです。

でもそれが出来ないんです。

 

立派な会社では(立派な会社でなくとも)、会社のERP(Enterprise Resources Planning、基幹システム)と倉庫内の在庫管理をするWMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)を繋げて管理をするのが一般的です。

しかし私の倉庫はそんなシステムは導入出来ていません。

お金がないし、情報システムの人員もいないので。

そんな倉庫での在庫管理だと思って下さいまし。

 

まず商品の管理単位と品番の付け方で本社の担当者と物流担当者間で揉めます。

色々なパターンがあり、商品特性によっても変わってくるので、今回は一般的なTシャツを例として話を進めます。

 

その1:1商品1品番が大前提

物流からすると、1商品に1品番が必要です。

デザインTシャツがあります。

デザイン、サイズ、色が異なればそれぞれ別の品番を付けるべきですが、開発担当者はサイズまでを別にして、色では区別しません。赤も青も黒も同じ品番(ここではA001番とします)で管理しろ、と言います。

昔の話なので品番を増やすと本社側での管理が大変だったからかもしれません。

現場では困ります。

物流担当者:「ピッキングする際にA001だけではどの色をピッキングすれば良いのかわかりません」

開発担当者:「ピッキングリストの備考欄には色が記載してあるからわかるだろ」

と言われてもね。

赤と黒だったら区別はつきますが、赤とピンクとアマンドピンク(死語ですか?)だと作業者の判断が必要となってくる訳です。

作業者に判断をさせない事は以前の記事で書きました。

ダメなパターンです。

その2:同じ商品でも入数が異なったり、セットになれば別品番。

普通の商品であれば1個単位で1品番です。Tシャツを1つピッキングしろと言われたら1枚取ります。当たり前ですが。

開発担当者は量販店向けにA001  3枚を1パックにした限定商品を作りました。表には量販店の「お買い得品!」シールがデカデカと貼られています。

倉庫現場ではセット品専用の品番が必要です。しかし開発担当者は別品番を設定するのを嫌がり、ピッキングリストにはA001x3枚と表示させます。

作業者はそれを見て通常のA001を3枚ピックしてしまいます。

あるいは量販店向けではない通常の注文でA001が3枚の出荷時に、誤って量販店向けのパックされた物をピッキングしてしまいます。

中身が同じでもセット品は別品番が必要なのです。

その3:B級品とて別品番。が好ましい。

商品の品質が異なれば、別な品番を付ける必要があります。

これはちょっと悩ましい例です。

Tシャツは東南アジアの国で生産され、国内輸入して販売しています。

入荷時のチェックで肩の部分の縫製が曲がっており、正規品として販売できないことがわかりました。

廃棄することはできないので、「B級品」として自社通販サイトでアウトレット品として売ることになりました。ここで「A001のB級品」として在庫管理する必要が出てきます。

しかし、開発担当者は、このロットだけのために別品番を採番することは嫌がります。

その気持ちは少しわかります。このB級品が出荷され、倉庫からなくなってしまえばその品番は必要なくなるからです。

開発担当者は「ロケーション(保管場所)を分けて保管すれば管理できるだろう」と言います。

 

やったことがあります。

パレットにB級品の段ボールを載せて、正規品から離れた場所に保管しておきました。「B級品」の張り紙もしました。

数日経ってそのロケーションに行ってみるとB級品のパレットがありません。

数人のフォークマンに聞いてわかりました。

フォークマンA:「奥の商品を取るので、パレットは一旦どかしましたよ。でも戻しておきましたから、ないはずはないですよ」

別のフォークマンB:「ここにA001があるのはおかしいから、元の場所(正規品のロケーション)に移動しました」

私:「B級品の張り紙がしてあったでしょ」

フォークマンB:「張り紙?見なかったなあ」

慌てて正規品の保管場所に行くと、B級品のパレットはありました。張り紙は反対面に貼ってあり、通路側から見えません。

そして、1ケースが抜き取られていました。

倉庫の全リーダーに伝えて、A001の含まれた出荷は全て止めるように指示しました。

幸い、B級品はピッキング棚に補充されていましたが、ピッキングされてはいませんでした。

間一髪でした。B級品をお客様に出荷してしまうところでした。

このケースでもB級品に別品番を付けておけば、最後の検品の際に引っかり止めることができます。

 

その4:販促品にも品番を。

販促品も悩ましいです。

カタログ、リーフレット、POP、ノベルティ品など販売しない商品には品番を付けないことが多いです。

しかし、頻繁に改訂されるリーフレットだとどの版なのかを品番で区別しないと、前の版の在庫があるのに改訂版を出荷してしまったり、その逆をやったりします。

また販促品で悩ましいのは、JANコードを印刷することができないことです。

以前、本社のカタログ担当に依頼し、JANコード採番し、JANコードをカタログの裏面スミに印刷してもらいました。

出荷して数日後、小売店のお客様からクレームが入りました。

「JANコードがあると、レジ係はJANコードをスキャンする。販促品はPOSの商品登録していないから、JANコードをスキャンするとエラーとなり会計業務が滞ってしまう。エラー原因を確認していると、お客様を待たせることなる。」

倉庫のカタログにはJANコードの上から白いシールを上貼りしました。

残念でした。

その後は最低でも品番を文字・数字で裏面の一番下に小さく入れてもらうようにします。

それで何とか間違いやピッキングミスを防ぐようにしました。

 

その5:商品の仕様変更。

原材料の都合や、生産工場の都合で、商品の仕様を一部変更する場合があります。

会社とすれば商品としては同一なので、これまでの品番を使い、現仕様の商品在庫がなくなったら新仕様を出荷開始する、いわゆる「ランニングチェンジ」を行います。

物流現場としてはこれも新品番にして欲しいところですが、納品先のお客様(企業)は、「品番が変わると社内登録を諸々変更しなくてはならないのでダメ。販売上は問題ないので変えないで。」と言われます。

お客様から言われると仕方ありません。

これはWMSを導入していると制御ができるのですが、マニュアル管理の倉庫では人頼りになり、ミスの可能性はあります。

 

同じ商品といえ、少しでも形状、数量、品質が違うものがあれば品番を分けるのが最善策です。

しかし全ての場合に品番を分けることができないのも事実です。

 

今回は在庫管理の難しさをお伝えするつもりでしたが品番の話で終わってしまいました。

在庫管理についてはまた次回以降に。

 

 

注意今日の用語:「ロケーション」

ロケーションは倉庫内の番地のことです。住所と同じで、倉庫内の場所に番号を振って特定できるようにします。番号の付け方は様々で、やり易く皆が分かれば良いです。

倉庫管理システム(WMS)が入っていればもちろん、入っていなくてもロケーションで管理すると精度が上がります。

 

クローバーコメントお待ちしております。